寒さが厳しいこの季節。
おでんやなべ物、そしてシチューといったあたたかい食べ物が恋しくなりますよね。
そこで今日は、各国で愛されているシチューとそれらに合わせたいお酒についてご紹介していきます。
シチューとは?
シチューとは、肉や野菜をスープで長時間火にかける煮込み料理のこと。
英語の「stew」には、料理名の他に「ゆっくり時間をかけて火で煮る」という意味の動詞として使われることもあります。
たくさんの材料をひとつの鍋に入れて煮込むシチュー料理は、世界各国にあります。
紀元前500年頃の西ヨーロッパで様々な食材を木から吊した大きな鍋に入れ、長時間火にかける料理があったとの記録が残っています。
これがシチューの始まりだと言われています。
イギリスのシチュー
イギリスの代表的な煮込み料理と言えば「オックステイル・シチュー」。
オックステイル(牛の尾)は、旨味とコラーゲンの塊!
骨についた肉はトロットロに柔らかくなり、骨と肉から染み出す出汁は格別の味わいです。
そのオックステイルを関節で切り分けて下ゆでし、それを焦げ目がつくまで焼き、たまねぎ・にんじんセロリといった野菜と炒めた合わせ、赤ワイン・トマト・ブイヨン・香辛料等を加えて弱火で長時間煮込んだシチューです。
すべての味わいが混然一体となり、濃厚な味わいが楽しめます。
こちらに合わせたいのは、「サミュエルスミス ブラウンエール」です。
カカオやナッツのような華やかなアロマがあり、麦芽の香ばしい味わいの後にホップの苦味がやってきます。
苦味が控えめで、味もそれ程濃すぎずに飲み易いため食中酒にぴったりです。
フランスのシチュー
フランスのシチューで思い浮かぶのは「ブフ・ブルギニヨン」(ブルゴーニュ風牛肉の赤ワイン煮込み)です。
本場のブッフ・ブルギニヨンは、地元のピノノワールを使うことが多いのでマリアージュの王道パターンに則り、同じブルゴーニュのワイン「ブルゴーニュ ピノ・ノワール[2019]ルイ・ジャド 赤 」を合わせてみましょう。
ルイ・ジャドはブルゴーニュを代表する生産者です。
19世紀からネゴシアン業を手がけ、グラン・クリュ、プルミエ・クリュ、モノポールを含む多くの自社畑を多く持つブルゴーニュ屈指のドメーヌであり優良ネゴシアンの一つです。
ラベルに描かれているギリシャ神話に登場するワインの神様「バッカス」のデザインラベル、見かけたことがあるのではないでしょうか?
ふくよかなフルーティさとシルキーな舌触りと優しいタンニンが感じられ、穏やかで調和のとれた味わいに仕上がっています。
若いときには赤い果実のフルーティーさを発揮し、時間とともに森の枯れ葉の香りやスパイシーさなどより熟成した香りで楽しませてくれ、ブルゴーニュの高貴なピノ・ノワールの魅力を存分に味わえます。
シチュー・ワインを交互に口にすると、それぞれの風味が相乗効果を発揮!
旨味が共鳴するんです。
またピノノワールの綺麗な酸がお肉の脂を洗い流してくれるので、美味しく食べ続けることができます。
ドイツのシチュー
ドイツからは「煮込みソーセージ」です。
キャベツやニンジン、カブやブロッコリー、といった野菜がソーセージの旨味をたっぷりと蓄えやわらかに煮込まれた家庭料理。
寒い時期にいただくと、全身に大地の恵みがしみ込むような感覚を覚えます。
こちらには、「ホフブロイ ミュンヘン オリジナル ビール ピルスナー タイプ」を合わせましょう。
南ドイツ・ミュンヘンの文化遺産ビアホール「ホフブロイハウス」を所有する ホフブロイ・ミュンヘンが手掛けるピルスナーです。
「キレ」があるのがピルスナーの特徴。
すっきりとしたのどごしを邪魔しないモルトのコク、ホップ由来のしっかりとした苦味があり、アツアツのソーセージや野菜のやさしい美味しさと小麦麦芽の旨味の双方の味わいが際立ちます。
イタリアのシチュー
イタリアの煮込み料理と言えば「トリッパ」ですね。
トロトロに煮込まれた濃厚な美味しさはそのままで、バゲットにのせていただくとほんとにお酒に合いますよね。
牛の胃は4つあるのですが、その中の第二胃(はちのす)のことであり、それをトマトなどとともに煮込んだイタリア料理のことです。
地方によって少しずつ特徴があり、ローマ風はトマトソースで煮込み、ペコリーノ ロマーノ(羊乳のチーズ)とミントがクセになるおいしさです。
この料理はトラステヴェレ(テヴェレ川の向こう)という下町で生まれました。
屠殺場の近くだったトラステヴェレで、余りの内蔵や尻尾の部分を無駄にせず美味しく食べる工夫が誕生し、今に受け継がれています。
フィレンツェ風も香味野菜入りのトマトソースで煮込むのですが、仕上げにパルミジャーノのような硬質チーズをかけていただきます。
パニーニに挟んだサンドイッチも観光地のマーケットや広場の屋台などで売っているので、手軽に楽しむことができます。
ミラノ風は、第三胃を使った野菜たっぷりで白いんげん入りの濃厚なスープ。
他の地方のものとは少し趣が異なります。
日本のイタリアンのお店でよく出されているのはフィレンツェ風。
こちらに合わせたいのは、同じトスカーナ地方の「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ [2015] レッチャイア <赤>」です。
トスカーナを代表する高級ワイン、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ。
生産者のレッチャイアは、ブルネッロのスペシャリストで評価の高いワインを生産しています。
サンジョヴェーゼ・グロッソを100%使用し、スロヴェニアン・オークの大樽36ヶ月以上熟成されます。
ブラックチェリーやブラックベリー等の色の濃い果実や花、スパイスの贅沢な香りがあります。
柔らかでしっかりとした果実味と優しくシルキーなタンニンが続き、アフターは長めです。
食べ合わせてみたところ、絶妙な相性!
トリッパの臓物料理特有の香りとブルネッロの濃厚な味わいが、体にドーンとしみわたるコクとぴったりです。
さらに、パルミジャーナの塩気がワインを進ませます。
日本では、シチューと言えば白いクリームシチューかビーフシチューですが、地域色豊かなシチュー料理の味わいとお酒のペアリングを探求してみてはいかがでしょうか。