おふくろの味を連想させる家庭料理の代表ともいえるのが肉じゃが。
しょうゆとみりんをたっぷりと使ってほんのり甘く煮付けた肉じゃがは、ホッとする和食の煮込み料理のひとつとして、好きな方も多いのではないでしょうか。
今日は肉じゃがの歴史やちょっとした疑問、一緒に楽しみたいお酒についてご紹介します。
軍隊の食事として広まった肉じゃが
じゃがいもに玉ねぎ、人参と糸こんにゃくにお肉を油でさっと炒めてから煮込む肉じゃがの歴史は意外と古くないことをご存知でしょうか。
もともとはカレーライスと同じように、軍隊の食事として広まりました。
カレーライスとほぼ同じ具材を使うことから、物資の補給がしやすいことがその理由だったようです。
イギリスを訪れた東郷平八郎がビーフシチューを気に入り、それを海軍で出そうとしたものの、誰も味がわからなかったため、聞いた話からイメージして作ったのが肉じゃがだといわれています。
初めて書籍などで紹介されたのは、1950年のこと。
「主婦と生活」の1月号にその名が記されており、食堂のメニューだったことが分かっています。
レシピとして初めて紹介されたのはさらにその後で、1964年のことになります。
実際に肉じゃがが庶民に広まったのは1970年代だといわれ、多くの雑誌や書籍でそのレシピが掲載されたことが要因となっているといいます。
肉じゃがに使うお肉は牛肉?豚肉?
普段肉じゃがを作るときに使うお肉は、どんな物を使うでしょうか。
牛肉を使う家もあれば、豚肉を使う家庭もあるでしょう。
肉じゃがに使うお肉は、西が牛肉、東が豚肉が多いといわれています。
なぜそのような違いが生まれたのかといえば、それは家畜の歴史や食文化に影響されたものだといえます。
関東以北は気温が低いこともあり、寒い中でしっかりと動ける馬が農耕のために飼育されていましたが、温暖な気候の西日本では、力の強い牛が飼育されていました。
明治以降肉を食べるようになってから、関東以北では飼っている馬は潰さずに、代わりに豚を食べるようになり、関西では飼っている牛を食べるようになりました。
そのため、肉じゃがという名前がつくよりも古くから、煮込み料理に使うお肉も東西で違いが出たといわれています。
肉じゃがに向いているじゃがいもの品種は?
じゃがいもといっても、今はさまざまな品種のじゃがいもがあり、どれで作るのがおいしいか、悩んだりする方もいるかも知れません。
煮崩れが気になる場合は、メークイーンを使うと形が崩れずきれいに仕上がります。
男爵のような煮崩れしやすいタイプのじゃがいもは、どちらかというとつぶしてコロッケやポテトサラダなどに使うと、ホクホク感が楽しめていいといえます。
男爵系のじゃがいもをあえて少し煮崩して、他の具材とからんだ甘みを楽しむというのもいいかもしれません。
インカのめざめなどの、両方のいいとこ取りをした品種もあるので、どういう系統のじゃがいもかを確かめてから使う料理を決めるといいでしょう。
肉じゃがで何を飲む?
さて、肉じゃがをおつまみに飲むのなら、どんなお酒がいいでしょうか。
和食なので日本酒を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、意外とワインが好相性だったりします。
おしょうゆとみりんを使う、いわゆる家庭の肉じゃがであれば、おすすめなのはスパイシーな香りのある赤ワインです。
スペインのテンプラニーリョや、フランスのグルナッシュなど、まろやかでスパイシーな赤ワインはじゃがいもや人参のもつ土の香りによく合います。
また、さっぱりと食べることのできる塩肉じゃがならば、チリやオーストラリアのシャルドネなどもよく合います。
このとき、お肉は豚バラ肉などにするとさらにぴったり来ます。
お肉を鶏肉に変えて、トマトなどの洋野菜とコンソメで煮込む洋風肉じゃがなら、少し甘みのあるドイツのリースリングを。
ほんのりとした甘みが疲れた体をホッと癒してくれます。
いろいろアレンジもできる肉じゃがは、自分好みのレシピを探すのも楽しい料理です。
わが家の1品と好みのワインで、ゆっくり食卓を囲みたいですね。