クエはお好きですか?
私がクエを初めて食べたのは、今から約20年前。
和歌山県で専門店を訪れました。
鍋に入れる前のクエの切身の美しい桜色と、脂がのった白身の上品な甘みと旨味を忘れることができません。
薄造りには歯をはじき返すような弾力があり、鍋にすればゼラチン質と淡白な白身の両方が楽しめ、食べ応えはフグ以上の満足感があるとも言われています。
クエとは?
クエは、水深50~100mの岩礁に棲むスズキ目ハタ科の海水魚です。
ハタの仲間なので、大きな頭と口が特徴的です。
天然のクエは20年以上生き、体長1m、重さ30~50kgにもなると言います。
大型のものは、マハタ等に似ていますが、クエは尾ビレの縁が白くないのでその点で見分けます。
福岡や山口県の下関では「アラ」、三重県では「マス」、伊豆諸島では「モロコ」などと呼ばれています。
そして、クエには「雌性先熟(しせいせんじゅく)」という、生まれてから性転換を行う特殊な生態があります。
なんと、生まれた瞬間はみーんな雌なんです。
しかし繁殖を終えた後にオスになります。
縄張りと雌を巡って雄同士が激しく争うため、体の小さい雄は縄張りを持てず繁殖の機会を得にくくなります。
そのため一生のうちに自分の子孫をより多く残すために、小さいうちは雌として繁殖を行い、縄張りを持てる大きさになったらより効率よく自分の子孫を残せる雄に性転換をするのだとか。
このことから大型のクエはそのほとんどが雄で、小型のクエはすべて雌ということになります。
クエは幻の魚?
クエは定置網や釣りで水揚げされ、主な産地は和歌山県、三重県、長崎県です。
しかし天然物のクエはほとんど市場に出回らないため、幻の高級魚と言われてきました。
天然物のクエは漁獲量が少なく希少価値が高いことから庶民の口にはほとんど入らない魚だったのです。
しかし最近では養殖物のクエが安定した価格で市場に出回るようになりました。
養殖が行われているのは和歌山県、三重県、静岡県などです。
中には「紀州梅クエ」という、梅酢エキス配合飼料と地元産の魚を与える事で、味わい深い高品質な本クエに成育する種類も。
和歌山名産の梅で育ったなんて、聞いているだけで美味しそうですよね。
それでは、クエの様々なお料理とそれぞれに合わせたいお酒をご紹介します。
クエ料理①刺身
クエの刺身には、あっさりした中に旨みがあります。
新鮮なクエは弾力に富み寿司ネタとしても好まれます。
昆布じめでいただくのがおすすめなほか、クエを刺身にするなら身のほかに、肝や胃袋もおすすめです。
胃袋はコリコリとした歯ごたえがあり、噛みしめると甘みを感じます。
肝には濃厚な旨みと甘みがあり絶品です。
紀土 -KID- 純米吟醸 しぼりたて
合わせたいお酒は、和歌山県海南市の平和酒造が手がける「紀土 -KID- 純米吟醸 しぼりたて」です。
しぼりたてらしいフレッシュな味わいと、なめらかな口当たり、紀土らしい爽快さ、綺麗さと柔らかな旨味が特徴です。
高野山の伏流水を使用した日本酒は、口当たりが柔らかく香りも立ちすぎていないので、クエの旨味を引き立ててくれます。
クエ料理②クエ鍋
次はクエ鍋です。
肉のようにしっかりとした身と、甘い脂がたっぷりのったクエを堪能するならやっぱり鍋が一番!
「鍋料理の王様」とも言われています。
アラや昆布などでとったダシに新鮮なクエを入れると、身が引き締まり、脂ものった身がダシも吸って、最高の食感と味わいが実現します。
身と皮の間のゼラチン質も、アラから出たダシの旨みが染み、格別の美味しさです。
また、切り身だけではなく、肝や胃袋など身以外の部分も一緒に入れて食べると、それぞれの風味や食感の違いが堪能でき、より一層クエ鍋を楽しむことができます。
ヴィーニンガー・ウィーナー・ゲミシュターサッツ 2019
ペアリングしたいお酒は、爽やかな酸味とミネラルのバランスの取れた、優しい味わいのドライな白ワイン「ヴィーニンガー・ウィーナー・ゲミシュターサッツ 2019」です。
「ゲミシュターサッツ」とは、ウィーンで造られる、複数のブドウを同じ畑に植え、同時に収穫・醸造する伝統的なワイン造りの方法です。
このワインには、グリューナー・ヴェルトリーナー、ヴェルシュ・リースリング、ヴァイスブルグンダー、リースリング、シャルドネ、ソーヴィニヨンブランなど計11種のブドウが使われています。
非常にフレッシュ&爽やかで、優しい果実味が広がります。
清々しい爽やかな酸味はポン酢と調和し、ミネラル感がしっかりとあるので、クエの繊細な旨みを引き立ててくれます。
クエ料理③天ぷら
最後の料理は天ぷらです。
クエは熱を通しても硬くならないため、ふっくらとした白身の旨味をダイレクトに感じられるのが天ぷらです。
表面がさっくり揚がった身を一口噛みしめると、口の中に脂があふれ出します!そして、その繊維質のやわらかいこと!
シャンパーニュ・ロンバール ブリュット・レフェランス
合わせたいお酒は、シャンパーニュ。
「シャンパーニュ・ロンバール ブリュット・レフェランス」はいかがでしょうか。
1925年創業の家族経営のシャンパーニュメゾンが手掛けるこちらは、シャルドネの軽さとピノ・ノワールのまろやかな味わいを活かしたエレガントで弾けるようなキレの良い泡が特徴。
フルーティーでとてもバランスがよく、キリッとした口当たりが印 象的なシャンパンです。
クエの旨味はアミノ酸系の旨み成分の組み合わせでできていると言われていることから、他のワインよりもアミノ酸の旨みが多く含まれているシャンパーニュとは特に好相性です。
クエの美味しさを様々な調理法で味わい尽くし、至福のペアリングを見つけてみてはいかがでしょうか。