木枯らしが冷たい寒い日は、あたたかいうどんが恋しくなりますね。
熱いお出汁をふうふうしながらたぐるうどんは、汁気を吸ってふっくらとやわらかく、心まであたたかくなります。
うどんといっても地域によってその特徴もさまざまで、ごく一部の地域でしか食べられていないものも多いことが知られています。
今日はそんなうどんのひとつ、京都の「けいらんうどん」についてご紹介します。
うどん屋さんが多いのは香川県だけじゃない!
うどんというと、最近は讃岐うどんがブームになってから久しく、チェーン店があることも手伝って、コシの強いざるうどんなどが人気ですが、関西地方もうどん屋さんが多いことで知られています。
その中心地でもある大阪のうどんは400年の歴史があり、大阪城を築城した頃に人夫のために立ち並んだうどんや蕎麦の店に始まるといわれています。
大阪のうどんはつるつるとした口当たりともっちりした食感で、角がなく丸い麺を、薄味で飲み干せるうまみたっぷりの出汁でいただきます。
角がないのは「角を立てずに丸く収める」という、大阪ならではの発想に基づくものです。
うどん文化圏・関西でも一味違う「京うどん」
しかし、大阪からすぐ近くなのに、京都のうどん屋さんでは、全く別の「京うどん」を味わうことが出来ます。
京都のうどんの特徴は、なんといってもその香りの良い出汁。
数々の料亭から受け継がれた、鰹と昆布をたっぷりと使った出汁は、薄口醤油で淡く味付けし、その出汁が絡みやすいように、中細の麺をくたくたになるまで煮込んであります。
さらに、注文すると出てくるものも一味違います。
例えばきつねを注文すると、大阪なら甘く煮たお揚げがのっていますが、京都では油あげを刻み、九条ねぎとともにのせてあります。
たぬきはそれをあんかけにしたもので、甘く煮たお揚げがのったものは「甘ぎつね」と呼びます。
ほかにも「きぬがさ」「しっぽく」「のっぺい」「花まき」と、見慣れない名前がたくさん並びます。
そのなかでも「けいらん」と呼ばれるうどんは、京都らしさを感じることの出来るソウルフード的な存在として知られています。
京うどんの真骨頂「けいらんうどん」とは
けいらんうどんという言葉の響きから、玉子を連想した方も多いかもしれないですね。
その通りで、玉子を使ったあたたかいうどんの中でも、あんかけにしたものを京都ではけいらんうどんと呼びます。
けいらんとは別に、あんかけでないものは玉子とじというので少しややこしいのですが、けいらんうどんはあたたかいうどんの上に溶き卵を流し入れ、とろみのついたあんをかけ、仕上げにおろし生姜をのせたうどんのことをいいます。
京うどんの大きな特徴である香りの良い出汁を、玉子の入ったあんとともにうどんにからめていただける京都らしいメニューです。
溶き卵があんの中に散る様はまるで湯葉のようで、ざっくりと混ぜた玉子の白身や黄身の、それぞれの味わいをやわらかいうどんとともに楽しむことが出来ます。
ふっくらと煮えたうどんと香り高い出汁、ふんわりと散った溶き卵が美しい、生姜の効いたあんは、身も心も芯からあたためてくれます。
家で作るなら、ちょっといいだしパックを使って出汁を引き、溶き卵を煮立てた出汁に入れたら、水溶き片栗粉でとろみをつけ、仕上げにおろし生姜をのせればOKです。
おいしい玉子が手に入ったら、挑戦したいけいらんうどん
玉子はかつて贅沢品で、栄養をつけるために食べた滋養の高いものでした。
冬の寒い日にふわふわの溶き卵が散った熱々のあんをかけた生姜風味のうどんは、きっとごちそうだったはずです。
そんなことを考えながら、熱々のけいらんうどんをいただけば、京都の厳しい寒さも悪くないと思えるかもしれませんね。
おいしい玉子を手に入れたら、とびきりの出汁を引いて、けいらんうどんを作って食べてみては。
きっと毎日の忙しい仕事の合間でも、けいらんうどんがいにしえの都へと気分を誘ってくれますよ。