年が明けた頃から春先までの短い間、和菓子屋さんの店頭に並ぶのが「うぐいす餅」です。
若草色を思わせる、淡い緑色をしたシンプルな見た目の和菓子は、春先の茶事などに欠かせない存在です。
今回はうぐいす餅のいわれや元祖のお店でのお取り寄せ、よく合うお酒をご紹介します。
早春の和菓子、うぐいす餅
うぐいす餅はあんを求肥で包み、薄緑色をしたきな粉をまぶした和菓子です。
淡い緑色のきな粉は青大豆を使って作られ、青きな粉とも呼ばれています。
あんを包む薄い求肥はふんわりとやわらかく、ひとくち食べるとあんのやさしい甘さと香ばしいきな粉の香りが口いっぱいに広がります。
うぐいす餅の形は小鳥を模していて、楕円に丸めたものを左右に引っ張って作ります。
その様子はふくふくと羽をふくらませた春先のうぐいすのよう。
和菓子屋さんの店頭に並ぶのは、年明けから3月くらいまでの間で、ちょうどうぐいすがさえずり始める頃までのお菓子でもあり、早春の茶事には欠かせない和菓子です。
うぐいす餅の名付け親はあの人
うぐいす餅がその名前になったのには、ちょっとした由来があります。
それは安土桃山時代のこと。
現在の奈良県にあたる、大和郡山にある郡山城の城主だった豊臣秀長が、兄である秀吉を招いて茶会を開くことになりました。
そのとき秀長は、郡山城のすぐ近くにある御用菓子司・菊屋に、茶事で使う珍菓を作るように命じ、菊屋治兵衛が納めたのがうぐいす餅でした。
当初名前はなく、茶事に招かれた秀吉がこの餅をたいそう気に入り、「以来この餅をうぐいす餅と名付けよ」と銘を下賜したのだそうです。
時代は流れ、この和菓子のことを現在は「御城之口餅(おしろのくちもち)」と呼びますが、これは菊屋が郡山城の入口近くにあることから来ています。
ちなみに御城之口餅は求肥ではなく餅を使い、まぶしているきな粉も青きな粉ではなく普通のきな粉を使っています。
小鳥のうぐいすというと、現代の青きな粉を使ったうぐいす餅のような緑色ではなく、茶色がかった色をしているので、その名をつけたのも納得です。
御城之口餅はネットショップでも購入することが出来るので、400年以上の時を越えて愛される由緒正しいお菓子を味わってみたいですね。
自宅でも簡単!うぐいす餅の作り方
春先の短い間しか買うことの出来ないうぐいす餅ですが、意外と簡単に自宅でも作ることが出来ます。
あんこを練り、白玉粉に砂糖と水を加えたものを火にかけて練り上げ、仕上げに水飴を加えて求肥を作ったら、うぐいす粉を広げたバットに求肥を広げてうぐいす粉を振り、個数分に分けてあんこを包みます。
形を整えたら仕上げにうぐいす粉を振って出来上がりです。
できたてはうぐいす粉が香ばしく、一段とおいしく感じられますよ。
うぐいす餅とお酒を合わせるなら
早春の茶事に欠かせない季節の和菓子、うぐいす餅は、点てたばかりのお抹茶や煎茶だけではなく、お酒に合わせてもおいしくいただくことが出来ます。
お酒好きの方はこれまでもさまざまなお酒に和菓子を合わせてきた方もいるかと思いますが、春を告げる和菓子に合わせるなら、シェリーはどうでしょうか。
なかでも熟成感のあるアモンティリャードがおすすめです。
アモンティリャードはフィノとそれを酸化熟成させたオロロソの中間にあたるもので、独特の複雑な香りが楽しめるシェリーです。
スペインでは屈指のボデガとして知られるエミリオ・ルスタウのアモンティリャードは8年間フィノを熟成したもの。
ヘーゼルナッツや樽、レーズンのような香りが感じられるソフトな味わいのシェリーは、うぐいす餅のきな粉の香ばしさを引き立ててくれます。
まだ肌寒い春先の夜、食後のデザートとしてアモンティリャードと楽しむのもいいかもしれません。