今回紹介するのは、小学館「ビッグコミックオリジナル」で連載していた「あぶさん」(水島新司)です。
1973年から連載が始まった「あぶさん」は、コミックスが100巻を超えるロングラン漫画でしたが、昨年2月、無事最終回を迎えました。
漫画は、お酒の大好きなプロ野球選手、景浦安武(かげうら やすたけ)選手の活躍を描いたもので、タイトルは、名前の「安武」の読み「あぶ」と、リキュール「アブサン」にちなんでいるそうです。
主人公が大酒飲みなだけに、漫画には多くのお酒が登場します。今回はその中から1本紹介しましょう。
第9話「利き酒」
コミックス31巻、サブタイトルにもなっている第9話の「利き酒」です。
あぶさんの義理の弟である小林満がヤクルトスワローズに移籍することになり、下宿先にあぶさんが挨拶に行きます。そこでタイミング良く始まるところだったのが“利き酒”でした。
プロ野球にオフシーズンがあるように、草野球も秋のひと段落を迎えたところで、草野球仲間で各出身地の清酒を持ち寄って利き酒をするのだとか。
そこで大家さんを含めて6人、つまり6種類のお酒が登場します。お酒は「越乃寒梅(新潟)」「千徳(宮崎)」「八鶴(青森)」「真澄(長野)」「浦霞(宮城)」「カープ(広島)」です。どれも紹介したいところですが、自己紹介で気になるところがありました。
真澄を持ってきた男性が「私は将棋田丸です、長野県の“真澄”です」と言っています。しかもこの男性のことを他の人が「七段」と言っている場面もあります。やはりプロ棋士の田丸昇九段(1985年当時七段)のようですね。
知っている人もいるでしょうけど、将棋のプロ棋士の方々は、東京には「キングス」、大阪には「シルバース」の草野球チームを持っています。作者の水島新司先生も草野球チームを持っていますし、その交流関係で田丸九段のゲスト出演になったのかもしれません。
田丸さんの持参した「真澄」は、長野県諏訪市にある宮坂醸造で造られているお酒です。ホームページによると、酒造りを始めたのが1662年とありますから、江戸時代の初期。長い歴史の中では、酒造り以外に手を広げたこともありましたが、近代になって評価が高まり、数々の賞を受けることになりました。
漫画に登場するのは、ラベルからすると「本醸造 特撰真澄」のようですが、ホームページによると「真澄の新しいスタンダード」として、2014年にリニューアルしていますので、もしかするとラベルも変わっているかもしれません。
さて「真澄」を含めた6本で利き酒をするのですが、その結果はどうなったか。大酒飲みのあぶさんは何本当てることができたか。それはぜひ漫画をご覧ください。
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あぶさん
作者:水島新司
出版社:小学館
全107巻
参考:真澄ホームページ