今回紹介するのは、小学館「ビッグコミックオリジナル」で連載されていた「みのり伝説」(尾瀬あきら)です。
と書くと、「尾瀬漫画で酒なら『夏子の酒』だろ。小学館でも『蔵人』じゃないの?」と思う人がいるはず。確かにその通りではあるのですけれども、あえてその辺りを外して「みのり伝説」を紹介したいと思います。
主人公は28歳の杉苗みのり。1話早々で会社に辞表を叩きつけてフリーライターに転身するのですが、アパートを立ち退くことになるわ、当てにしていた2か月分の給料が入らないわで、お先真っ暗の状況です。
そんな中でもフリーになって初の仕事の依頼が来る、それが別の仕事につながる、と光明が差しこんできます。そこで飛び込んでくるのが、別れた男からの電話。メモを見つつ飲んでいるのは、缶入りヱビスです。
第1話の冒頭に「三ヶ月前に腰のぬけるような思いで別れた男」とあり、第3話でも「あれほど大騒ぎ」とあるので、よほどの騒動だったのでしょう。さらりとモノローグで語られた別れに至る理由や、結果的にヨリを戻すことはない展開は、ぜひ漫画で読んでください。男性は女性に愛想を尽かされないために、女性は変な男とくっつかない注意になると思います。
さて徐々に仕事が軌道に乗りつつある中で行われたのが、ベテラン女優へのインタビューです。今一つ物足りない内容だったため、追加のインタビューをお願いして何とか完成させたところで、再び缶入りヱビスが登場します。
同じ缶ビールでも、前は複雑な表情、今回は「サイコー!!(ぷはーっ)」です。
商売繁盛の神様でもある恵比寿様のラベルで印象的なヱビスビール。これを知らない人は少ないでしょう。
愛知県豊田市や東京メトロの三越前駅ように、企業名が地名や駅名になることがあります。東京渋谷区の恵比寿町や山手線の恵比寿駅は、かつてヱビスビールの製造工場(現在は恵比寿ガーデンプレイス)があったことに由来するものです。
発泡酒や第3のビールがある中で「生活が苦しいのに、ヱビスは贅沢だよ」と思うかもしれません。
ただ発泡酒で初のヒットとなったサントリー「ホップス」の発売が1994年10月。これに続いて、サッポロビールが発泡酒「ドラフティー」を発売したのが1995年5月。漫画の連載は、その狭間で始まっています。
これがもうちょっと後だったら、スーパーでヱビスを買おうとして「いやいや、我慢だ」と発泡酒か第3のビールをカゴに入れたみのりの姿があったかもしれませんね。
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みのり伝説
作者:尾瀬あきら
出版社:小学館
全9巻
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