今回紹介する漫画は、新潮社「月刊コミック@バンチ」で連載中の「最後のレストラン」です。
舞台はフレンチレストラン「ヘブンズドア」。名前の因果か、時折、歴史上の偉人や著名人が紛れ込んできます。コミックス1巻のGUEST.4でもこんなことに……。
「まったくもう……」と言っているのが、前田あたりさん。歴史に詳しく、語学堪能なクールビューティーの女子大生のアルバイトで、この漫画の大黒柱みたいな人です。彼女が「定期的に変な人」としているように、最初の頃は、俳優か何かと勘違いしていました。
眼鏡をかけているのが、レストラン「ヘブンズドア」のオーナーシェフ、園場凌(そのば しのぐ)さん。急死した父親の跡を継いでレストランを経営しています。彼曰く「坂本様」、そして土佐弁でお分かりでしょう。
坂本竜馬の最後は、京都の近江屋で中岡慎太郎といたところを襲撃されています。相手は見廻組が有力ですが、新撰組、薩摩藩、紀州藩などの説もあります。そんな間際に紛れ込んできた竜馬なので、未来と言っても信じません。それどころか料理で証明しろとの注文です。
これはなかなかの難問です。それぞれの人が持つ「ものさし」の、ちょっと先を示す必要があります。漫画では、新聞、携帯電話、腕時計、(携帯電話の)ワンセグ放送を竜馬に見せますが、いずれも「紙っきれ」「精密なオルゴール」「時計は時計」「手妻(手品)」と一蹴されちゃいます。
日本とワインの関わりは、文献上では室町時代から戦国時代に、それらしい事物があったようです。ただ中国では漢(紀元前206年~)の時代にブドウが持ち込まれ、ワイン同様の醸造酒が造られ始めたそうで、その後の、晋、隋、唐の時代を経て、盛んに作られていたとのこと。
ですので、さかのぼって平安時代に栄華を極めた藤原道長、飛鳥時代に遣隋使を派遣した聖徳太子、それどころか魏と交流を深めた卑弥呼がワインを飲んでいた可能性があるかもしれません。その辺りは歴史の専門家にお任せしましょう。
と言っても、江戸時代にはごく一部の嗜好品だったワインです。ただ竜馬は交易などで外国人と交流があったので、ワインの味を知っていても不思議ではありません。
「気づいたか」ですね。
新聞は「紙っきれ」と切り捨てても、ワインボトルに貼られたラベルの西暦は、簡単に見逃すことはできなかったようです。
書き遅れましたが、こちらのウエイトレスは、高校生アルバイトの有賀千恵(ありが ちえ)ちゃん。当初は、園場シェフとバイトを合わせた3人で店を切り盛りしています。うらやましいと感じる人もいそうですが、「両手に花」でないのは、園場シェフの性格が少々問題なので。
「キューッ」と飲んだ竜馬は「かあ!うまか!」と満足しています。
先ほどまで争っていたことを含めて、何がしかの心の折り合いをつけたようで、表情も落ち着いてきました。千恵ちゃんへの眼差しに含むようなものがあるのは、彼女の一言が竜馬の心に引っかかっていたようなので。
さて竜馬に出されたワインは、メルシャンの「山梨勝沼甲州」。辛口の白ワインです。
かつて日本では、適当なアルコールに色と味を付けたものを「赤玉ポートワイン」などと称して売っていた時期もありましたが、今では多くの酒造メーカーで、きちんとしたワインの製造に取り組んでいます。
国内外の多くのコンテストで受賞を重ねたメルシャンの「甲州」もその1つ。メーカーのサイトでは、シーフード料理とともに「和洋折衷、さまざまなメニューが登場する日本の食卓におすすめ」としています。
漫画で竜馬が飲んでいる2008年の入手はちょっと難しそうですが、2013年であれば、市販価格は2,000円くらい。インターネット通販では、もうちょっと安めに手に入れることが可能です。
竜馬のオーダーした「未来の料理」は、漫画を読んで欲しいところ。それほど難しい料理でもないので、皆さんが自作することも可能です。ぜひメルシャン「甲州」と一緒に味わって、竜馬の気分になってください。
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最後のレストラン
作者:藤栄道彦
連載:月刊コミック@バンチ
発行:新潮社
既刊6巻
参考:キリン「シャトー・メルシャン 山梨勝沼甲州 2013年」
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