今回は、集英社「スーパージャンプ」などで連載していた「Bartender(バーテンダー)」から、カクテルを紹介します。
タイトル通り、主人公はバーテンダーの佐々倉溜(ささくら りゅう)。ヨーロッパのカクテルコンテストで優勝し、パリのホテルでチーフバーテンダーを任せられる程の腕前です。そんな彼が8年ぶりに日本に帰ってきたところから物語が始まります。
とあるバーのカウンターで何やら悩んでいる女性に、溜がジンフィズを勧めたことがきっかけで、新しくできるバーに関わるようになったり、「ミスターパーフェクト」の異名を持つバーテンダー、葛原隆一と出会ったりします。
その葛原が、溜に注文したカクテルが「ジンフィズ」です。ジンフィズのレシピは、ジン、レモン、砂糖をシェイクし、氷とソーダ水とを混ぜて完成。ジンにもいろいろありますが、溜はビーフィーターを使いました。
さて、なぜジンフィズを注文したのか。
登場キャラのセリフを借りると、「ジンフィズには、シェイクの技から酒と果汁の比率、炭酸や氷の扱いまで、バーテンダーとしての基本技術がすべて入っとる」ことから、「プロが新しいバーに入って、その店のバーテンダーの力量を計る」ために頼むのだそうです。
戻ると、溜が最初のバーで飲んでいたのもジンフィズなんですよね。そこのバーテンダーの技量を計っていたのでしょうか。
そしてジンフィズを作る溜に、葛原が尋ねます。「ジンフィズって誰が考えたんだろうね」「ジンフィズの『フィズ』って何のことかね」と。
前者は「1888年、アメリカニューオーリンズ、インペリアル・キャビネット・サロンのバーテンダー、H(ヘンリー)・ラモス氏の創作」と、後者は「『フィズ』は炭酸のはじける音からきているそうですが…」と答えます。
そつなく応答するのは、溜の修行あってのことでしょう。ただソーダ瓶を耳につけた溜は、「でも『フィズフィズ』なんて聞こえませんよね」と付け加えてます。擬音語や擬態語、さらに動物の鳴き声なども、国や言葉が変われば、随分と変わるもの。日本語なら「シュワシュワ」「パチパチ」「プチプチ」くらいでしょうか。
出されたジンフィズを飲んで、微妙なコクに気付いた葛原は、通常のレシピにラムを数滴混ぜたと推測、「君(溜)のオリジナルかね?」と聞きます。
それに対して溜は、「プロの…それも多分、一流のバーテンダーの方に、普通のレシピでは少々退屈ではないか」のように答え、和三盆糖(四国で造られる砂糖)を使ったことを明かします。
溜からすればサービスなのかもしれませんが、パーフェクト葛原にとってはバーテンダーの枠から外れたものだったようで、溜のことを面白いバーテンダーと認めつつも、「奇をてらった酒を作り、消えていったバーテンダーを何人も知っている」「君のカクテルは完璧からは程遠い」と評して去っていきます。この後も溜と葛原は、様々な形で関わっていくのですが、そちらは漫画をどうぞ。
さてジンフィズです。以前、サントリーから缶入りカクテルが発売されていたのですが、現在は販売が終了しています。カクテルと言っても、基本はレモンとアルコールの組み合わせですから、レモンハイなどとの差別化が難しかったのかもしれません。
ですので、飲むとすれば自作するか、バーなどで注文するかです。ただし漫画のように、バーテンダーの技量を試そうとして、ジンフィズを注文するのは要注意。パーフェクト葛原ならともかく、試す側が試されることになりかねません。
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Bartender(バーテンダー)
原作:城アラキ
作画:長友健篩
発行:集英社
全21巻