今回は、以前に「私のアイザック」を紹介した、きくち正太先生の「おせん」から、いくつかのお酒を紹介します。
講談社「モーニング」などで連載していたこの作品。いろいろあって「おせん」が16巻、「おせん 真っ当を受け継ぎ繋ぐ。」が11巻で完結しています。
「おせん」2巻の表紙を飾る2人の美女。向かって左側が、老舗料亭「一升庵」の名物女将の半田 仙(はんだ せん)さん。この漫画の主人公で、皆からは「おせんさん」と呼ばれています。
ちなみに愛知県の中埜酒造が日本酒「半田郷(はんだごう)」を作っており、栃木県の「せんきん酒造」が名前そのままに「仙禽(せんきん)」を、岩手県の酔仙酒造が「氣仙(きせん)」「酔仙(すいせん)」を、長野県の仙醸でも「黒松仙醸(くろまつせんじょう)」を製造・販売しています。この辺りから主人公の名前が来ているのではないかなと思います。
そして右側が「透徹と美意識と二人の女と」に登場する山口加夜(やまぐち かよ)さん。ランジェリー会社「ナコール」に勤めるバリバリの才媛です。なお「透徹(とうてつ)」とは澄み切ったこと、転じて真っ直ぐな意味を示す言葉です。
美意識に対するこだわりが相当にある加夜さんは、歓迎会の場で日本酒のチョイスに「何でもいいや」と言った同僚に対して、「何の個性も美意識も持たず、付和雷同するだけの連中が精鋭チーム?いっぱしをほざくんじゃねえ、小僧っこども!!!」と言い切って出ていきます。
その後、バーカウンターで1人、加夜さんが飲んでいるところに、おせんさんが割り込んできます。先ほど、加夜さんの切った啖呵で場が壊れてしまったのですが、おせんさんは「かっこいー」と言ってるんですね。
加夜さんからすると珍客なのかもしれませんけど、おせんさんにとっては「ホレたお方との一対一(サシ)の二次会」で、「今宵のわっちは腰が立たなくなるまで」飲み明かす意図でした。
そんな2人が飲んでいるのが、ブッカーズ、そしてオールドエズラ。ただし2人の雰囲気は対照的です。
頬を赤くしたおせんさんが「ぷはぁ」に「くはぁ」と楽しそうに飲んでいるのに対して、加夜さんは毛一筋ほども乱れることなく、淡々とグラスを空けていきます。最後の方には、いくらか酔いが回った様子も感じられるのですが、それでも頬は白いままでした。
「ぷはぁ」や「くはぁ」を苦々しく思っていた加夜さん。でも翌朝、ご馳走になった不意打ち同然の一杯に、とうとう「くっはぁぁぁっ」や「ぷはぁ」と言ってしまいます。そして「ここだけの話、たまにはいいものです、縁側気分も……」と本音がポロリ。その一杯、残念ながらお酒ではないのですが、酒飲みなら垂涎の一杯かなと思います。ここはあえて秘密にしておきましょう。
さて美女2人が飲んでいたブッカーズとオールドエズラ。
ブッカーズは、アメリカの酒造メーカー、ジム・ビーム社が製造するバーボンウイスキーで、アルコール度数が60度を超える強いお酒です。
サントリーのホームページによると、出荷に際して原酒をそのままボトリングしているため「製造年によって度数や香味に微妙な違いがあり、それがウイスキー通を魅了しつづけている」のだとか。
いつだったか「何も足さない、何も引かない」なんてコピーがありましたが、それを実行したのがブッカーズなんですね。手書き文章からなるボトルラベルには、最高級のバーボンであるとともに、6~8年熟成させた原酒に何も加えていないことを、しっかり明記しています。
オールドエズラでは、バーボンウィスキー「エズラ ブルックス」を、さらに熟成させたもので、こちらもアメリカの酒造メーカー、デイビッド・シャーマン社が手掛けています。
ブッカーズほどではありませんが、オールドエズラもアルコール度数は50.5度の高さ。5~10%程度のサワーやビール。15度前後の日本酒やワインなどからすると、50度、60度なんてアルコール度数は、雲の上みたいです。
それだけに酒豪を魅了するものがあったのでしょう、おせんさんと加夜さんは、ロックでガンガン飲んでいきます。
酒量は人それぞれなので、おせんさんや加夜さんのようにグラスを重ねる必要はありません。皆さんのペースでブッカーズとオールドエズラを味わってみてください。
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おせん
作者:きくち正太
発行:講談社
シリーズ全27巻
■参考
サントリー「ブッカーズ」:http://www.suntory.co.jp/whisky/craft_bourbon/bookers/
富士貿易「エズラブルックス」:http://www.fujitrading.co.jp/ihq/ezra/index.html