今回は講談社の「一杯では終われません」(梅吉)から、いくつかのお酒を紹介したいと思います。
漫画を「描く」と表現しますが、表紙で分かるように、この漫画は全編切り絵で制作された世にも珍しい作品で、「週刊モーニング」などに連載したものなどをまとめたものです。
切り絵の絵本や、挿絵として使われている小説は、これまでにも見た覚えがあります。でも、まるっと切り絵のコミックスは世界初でしょう。
さて作者の名前は「梅吉」ですが……
女性だったんですね。サブタイトルに「酒を求めてのらりくらり浅知恵紀行」とあるように、梅吉先生が全国の酒蔵などを回ってお酒を飲むエッセイ漫画となっています。
2話の「日本文化を愛する」では、京都の大石酒造を尋ねています。
大石酒造で一番最初に紹介しているのが、社長の大石博司さん。同社のホームページでも、大石社長の写真を見ることができますが、切り絵とそっくりです。
こちらのお酒が「酒伝 鬼ころし」です。酒瓶を包むパッケージが版画のデザインになっているので、梅吉さんにとっては見逃せなかったのでしょう。
ただし同社のホームページによると「本醸造辛口。アルコール約20%の原酒」とあるので、普通の日本酒より少々強め。でも梅吉先生も含めて、「そのくらいどんと来い!」なんて人もいるのでしょう。
そして三重県の清水酒造です。
同社のホームページには「季節雇用でない年間雇用の社員杜氏を採用したことにより、一年間を通じて、酒造りを行う」、「冷却設備を用いて温度管理が可能な小さなタンクを使って、約一週間をサイクルとした仕込みを行う」とあります。
漫画でも同じようなことが描いてあるので、看板(ホームページ)に偽りなしってところです。
こちらの杜氏である内山智広さんも、ホームページで写真を拝見することができ、似顔切り絵とよく似ています。経歴によると、地元の高校を卒業後、名古屋の専門学校でバイオテクノロジーを学んで、同社に入社したそうです。若きハイテク杜氏といったところでしょうか。
漫画では、内山さんが酒を飲めないと知った梅吉先生が「なんですと!」とビックリしつつ、「なのに内山君が杜氏になってから賞をとったりしているんだから不思議だ」と記しています。
いいだけご馳走になった梅吉先生が「社長、これうまいっすよ~」と飲んでいたのは、同社の「作(ざく)」なのか「鈴鹿川」なのか、それとも別の銘柄なのか。もしくは全部なのか。
さて連載中には、梅吉先生が嫌いな酒について描いた話があります。
漫画によると、「とある地方でシェアNo.1を誇る大手酒造メーカー」とあります。「大手」と聞いただけで顔をしかめる人もいそうですが、大手メーカーの作る全てのお酒がまずいというわけではありませんので、念のため。
梅吉先生曰く、まずい酒を飲むとこんな感じに。
さらに嫌な経験の記憶がよみがえるのだとか。確かにそんなお酒は飲みたくありませんね。
その反対に、おいしいお酒を飲むとこんな感じ。
こうした思いに共感できる人も多いのではないでしょうか。
皆さんもおいしいお酒で幸せな気持ちになってみましょう。
一杯では終われません
作者:梅吉
発行:講談社
参考:
大石酒造ホームページ
清水清三郎商店(清水酒造)ホームページ
切り絵師梅吉ホームページ
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