ビールといえば、みなさんはどのようなイメージを抱くでしょうか。
- ・金色で炭酸が強く、スッキリとのどごしが良い。
- ・飲むときはキンキンに冷やしてグビグビいく。
これまで日本の大手ビール会社によって製造されていたビールは、ほぼすべて同じ特徴を持っていました。色が赤や白であったり、冷やさない方がおいしかったり、甘かったりすっぱかったりするようなことはなかったでしょう。恐らく、いくつかのメーカーのビールをグラスに入れて比べてみても、見た目や味、香りにおいて、どれもそれほど差がないはずです。
これは、ビールという飲み物がそういう性質を持つ飲み物であるため、というわけではありません。
ビールは100以上の種類があり、パッと見ではとてもビールとは思えないものも数多くあります。我々がビールの特徴として認識しているのは、「ピルスナー」と呼ばれる種類(スタイル)のものなのです。
つまり、日本で売られている「ビール」のほとんどは、数あるビールの中のピルスナースタイルなのです。
比べてみても大差がないのも当然でしょう。
ピルスナーは味の切れが良く、冷やすとおいしいため、高温多湿になる日本の夏には良く合っています。アルコールの度数も低めで強い癖もないので、日本人の味覚になじみやすいビールでもあります。
また、ピルスナーの仲間は近代の大規模設備があれば、安定した品質で大量生産ができる特徴があります。日本にビールが入ってきたのが明治時代になってからであり、世界ではビールの大規模生産技術がすでに確立していたことも、ピルスナーが日本のビールの主力となった原因の一つでしょう。
日本のビールはピルスナーだけではない
このように、これまでの日本のビールはピルスナーにほぼ席巻されていましたが、近年になって風向きが変化し始めました。
まず、1994年4月に酒造法の改正が行われました。それまでは、ビール製造業者としてビールを製造・販売できるのは、年間2,000kl以上を製造できる業者だけでした。これが改正によって60kl以上となり、とても小規模な醸造所でも「ビール会社」となることが可能となったのです。
こうして、全国各地に地域密着・小規模醸造のビール会社が数多く生まれました。
これらの会社が作るビールは、競争に勝つためにそれぞれの特色を生かし、大手が作るピルスナーとは異なる、様々なスタイルのものになりました。こうした地方の小規模醸造会社が作るオリジナルビールは、「地ビール」と呼ばれました。
1994年に一度ブームが起きかけましたが、従来のピルスナーしか飲んだことがなかった人には手を出しづらく、小規模であったことで価格も高かったため、今一つ流行りませんでした。
また、ちょうどこの頃には、ピルスナーに似た味と見た目で価格も安い、発泡酒が台頭してきたことも流行らなかった原因の一つでしょう。しかし、2009年以降になると、地ビールはクラフトビールと名をかえ、再び世に躍り出ました。
従来とは違う、全く新しいビールを提供してくれるクラフトビールの市場は、毎年10%ものスピードで拡大し続けています。
参照元:6回地ビールメーカー動向調査(2015年10月1日公開)
これに触発された大手ビール会社でも、ピルスナー以外のビールを新規開発して発表し始めました。その結果、サントリーの「ビアクラフト」シリーズや、キリンビールの「グランドキリン」など、大手メーカーのクラフトビールとでもいうべきブランドも登場するようになったのです。
こうして、日本のビールは、一気に多品種化し、様々なビールを楽しめる下地が完成しました。スーパーやコンビニでも、今まで見たこともなかった種類のビールを見ることが出来るようになっています。
しかし、どれがどのようなビールなのかという情報に関しては、多くの人にはまだ今一つわからないままです。結局、今まで飲んでいたものを選んでしまうこともあるでしょう。
それでは広いビールの世界を知ることができません。
新しいビールの世界に挑戦する人のため、次回以降はビールの種類と味、メーカー、ビールを深く知るための知識について解説していきます。