ベルジャンホワイト:オレンジピールとコリアンダーを使った甘いビール

ベルジャンホワイト:オレンジピールとコリアンダーを使った甘いビール

ベルジャンホワイト(Belgian White)はその名のとおりベルギー発祥の白ビールで、略して「ヴェット」の名でも呼ばれます。
普通の麦芽に加えて生の小麦も使って仕込みをし、ホップと共にオレンジピール(オレンジの皮)、コリアンダー(いわゆるパクチー)の実と種を投入することで作られるという、独自の製法が特徴です。小麦を使うことから「ベルジャン・ウィート(ウィート=Wheat:小麦)」の名もあります。

ベルジャンホワイト

白ビールと呼ばれるように、色は薄い黄色が入った乳白色で、霞がかったようにうっすらと濁っています。この濁りは濾過されていない酵母と小麦のたんぱく質で、ビールの味わいや香りを出すための大切な要素です。炭酸は弱めですが、泡はかなりしっかりとしています。

小麦とオレンジピールによって果物のような甘い味わいと香りがあり、ホップの苦みや香りはほとんど感じません。酵母だけでなく乳酸菌も発酵を行うので、わずかに酸味のあるさわやかな味を持っています。

苦みがない代わりに甘みとわずかな酸味があり、フルーティーな香り、弱めの炭酸という、ピルスナーとは全く異なる特徴を持ったビールです。のど越しや切れの良さではなく、豊かな香りや味が持ち味のビールなので、時間をかけてゆっくりと楽しむ飲み方がお勧めです。

項目詳細
原産地ベルギー
発酵の種類上面発酵(エール)
白がかった金色(不透明)
度数4.8~5.2%
麦、ホップ以外の原料小麦(麦芽でない)、オレンジピール、コリアンダー、コリアンダーの種
最適温度10度
有名な銘柄(海外)ヒューガルデンホワイト(ベルギー)
ヴェデットエクストラ ホワイト(ベルギー)
セントベルナルデュス ホワイト(ベルギー)
ブルームーン(アメリカ合衆国)
など
有名な銘柄(日本)水曜日のネコ(ヤッホーブルーイング)
NESTホワイトエール(木内酒造)
ヒメホワイト(伊勢角屋麦酒)
スノーブロンシュ(KONISHI)
など

ベルジャンホワイトの味

ベルジャンホワイトを復活させた「ヒューガルデンホワイト」

最も有名な銘柄は、ベルギーで製造される「ヒューガルデンホワイト」です。20世紀半ばの時点でほぼ絶滅状態にあったベルジャンホワイトを復活させた銘柄で、現在のホワイトエールの多くはヒューガルデンホワイトを参考にしています。

ヒューガルデンホワイト

参考:beeronline

日本でも地ビールメーカーによっていくつもの銘柄が作られており、入手することはそれほど難しくなりません。

材料にコリアンダーやオレンジピールを使っているため、日本の法律では「ビール」の表記は出来ず、発泡酒に分類されています。しかし、ビールの歴史から見れば、品質維持のためにハーブをミックスした「グルート」を使うビールの方が先に産まれています。それゆえ、日本の法律では発泡酒に分類されているものの、ベルジャンホワイトはホップを使うビールよりもさらに古い伝統を受け継いでいると言えます。

ベルジャンホワイトビールではコップ型のグラスではなく、ワイングラスのような形の足つきグラスを使うのが一般的とされています。底に沈む酵母の澱も味や香りを作る大事な要素なので、グラスに注ぐ際は瓶を軽く回し、澱が残さず入るように工夫されます。

次回は、もう一つのエールビールの本場、イギリス発の黒ビール「ポーター」を紹介します。

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