セゾン(Saison)はベルギー南部のワロン地方を中心に作られているビールです。
農民によって作られていたビールで、農閑期に仕込みが行われていました。3月に仕込まれたビールは半年間貯蔵・熟成され、夏になると農作業の間の水分補給として飲まれました。セゾンという名前は、英語のシーズンと同じ「季節」の意味です。
喉が渇いても夏に生水を飲むのは危険だったので、ビールは欠かせない重要な水分補給源であり、どの農家もセゾンビールを作っていました。
セゾンの特徴
セゾンは長い貯蔵期間と、暑い夏の間に腐ってしまわないように、防腐剤としてホップが多めに使われているのが特徴です。ホップの苦みはかなり効いており、「ハッとするような苦み」というべきものです。さらに、酸味やハーブのようなスパイシーな味も感じられます。
香りはエールビール特有の柑橘類のような甘さを含み、炭酸は強くなく、立つ香りを楽しむためにピルスナーよりもぬるめの、10~13度の温度が飲み頃となります。ドライで苦いという爽快さと、華やかで香り高さを併せ持っている点が大きな特徴です。
夏に飲むとおいしいという点でピルスナーと共通していますが、方向性を異にしているビールといえるでしょう。
項目 | 詳細 |
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原産地 | ワロン地方(ベルギー南部) |
発酵の種類 | 上面発酵(エール) |
色 | 濃い金色~濃い琥珀色 |
アルコール度数 | 4.5~9% |
麦、ホップ以外の原料 | 無し |
最適温度 | 10~13度 |
有名な銘柄(海外) | セゾン・デュポン(ベルギー) ルフェーベル・セゾン1900(ベルギー) デュ・ボッグ セゾン(ベルギー) など |
有名な銘柄(日本) | 君ビール、僕ビール(ヤッホーブルーイング) 志賀高原・ミヤマブロンド(玉村本店) NEST セゾン・ドゥ・ジャポン(木内酒造) セゾンさゆり(ベアードブルワリー) など |
自家用ビールのセゾンが広がったきっかけ
18世紀になって産業革命による輸送網が発達すると、資金のある農家は他所にも売るために、大きな仕込釜などの生産設備を投入し、醸造農家へと家業を変更していきました。
こうして、村ごとに醸造を専門にする家が生まれ、現代でもセゾンを作っている醸造所が誕生することになりました。
セゾンはそれぞれの農家が自家消費用として別々に作っていたビールなので、色から味、香りが非常に多様で、特別な定義はありません。現在の醸造所が作っているセゾンも、それぞれの「家の味」の伝統を受け継いだビールです。そのため、同じ「セゾン」の名がついているビールでも、メーカーごとに大きな差があります。
会社や醸造所ごとに試飲して、どれが一番好きな「セゾン」なのかを発見するのもよさそうです。
次回はエールビールの代表的存在、ペールエールを紹介します。