ペールエール(Pale Ale)はエールビールの中でも一番代表的なスタイルです。ラガービールの代表選手がピルスナーだとすれば、エールビールの代表選手はペールエールであるといえるでしょう。
エールビールの本場であるイギリスやベルギーでは定番のビールで、日本のクラフトビールの中でも最も頻繁に目にすることができます。
ビールを語るうえでは、ペールエールは欠かせない存在といえるでしょう。
ペールエールを作る「水」の特徴
ペールエールは400年ほど前に、イギリスのイングランド中部にある、バートン・アポン・トレントという町で生み出されました。
この村の水はカルシウムと硫黄分が豊富な硬水で、この水がペールエールを作るうえで欠かせない存在となっています。カルシウムはビールの色が濃くなりすぎないように調節し、濁りの元となる浮遊物が沈殿させ、透明度を上げる手助けをします。硫黄はホップの苦みの成分を多く抽出する役目があります。
十分なカルシウムと硫黄が含まれた硬水でないと、ペールエールの色や香り、味を再現することは出来ません。そのため、バートン・アポン・トレント以外の場所で作られるときは、水に必要成分を添加する「バートン化」と呼ばれる作業が行われます。水をバートンの物にするということです。
ペールエールの特徴
ペールエールの最大の特徴は、フルーティーで華やかな香りです。ハーブを思わせる香りで、上面発酵酵母が生み出す副産物(エステル)と、硫黄分によって抽出されたホップの風味によって生み出されています。
味や苦みは銘柄や種類にもよりますが、コクの強さはやや軽めから中程度となっています。芳醇な味わいを持ちつつものど越しが良いので、癖がきついビールが嫌いな人でも楽しむことが出来ます。
多くのペールエールは赤みがかかった濃い色をしています。ペール(Pale=色が薄い)という名前に反しているようにも思えますが、これはペールエール以前にイングランドで作られていたビールに比べると色が薄いためです。
項目 | 詳細 |
---|---|
原産地 | バートン・オン・トレント(イングランド) |
発酵の種類 | 上面発酵(エール) |
色 | 金色~銅色 |
アルコール度数 | 4.5~5.5% |
麦、ホップ以外の原料 | 無し |
最適温度 | 10~13度 |
有名な銘柄(海外) | バス ペールエール(イギリス) アンカー リバティエール(アメリカ) ボディントン ペールエール(イギリス) コナ ファイアーロック・ペールエール(アメリカ) など |
有名な銘柄(日本) | 銀河高原ペールエール(銀河高原ブルワリー) よなよなエール(ヤッホーブルーイング) サンクトガーレン ペールエール(サンクトガーレン) ナギサビール ペールエール(ナギサビール) など |
ペールエールの飲み方
ペールエールはフルーティーな香りと風味が最大の持ち味です。香りを断たせるためにも、温度は10~13℃と、ややぬるめの温度で飲むのがお勧めです。一気に飲むのではなく、ワインのように味わいながらゆっくりと飲むタイプのビールといえます。
二杯目あたりから落ち着いて飲むビールとしては、これ以上おいしいスタイルもないでしょう。
イギリスではビールを飲むときに、1パイント(イギリスの規格では568ml)の量が入る、「パイントグラス」という大きなグラスが使われています。このグラスの上の方には「ノニック」というでっぱりが設けられているのが特徴です。
これは大きなグラスでも指がかかりやすいようにする意味の他、香りをグラス内に滞留させて、ペールエールの味わいを最後まで保たせる効果があります。
ペールエールの種類
イングリッシュ・ペールエール
イングリッシュ・ペールエールは、イングランドで生まれたペールエールの原型です。ペールエールを試すなら、ぜひ1度は口にするべきスタイルです。
ハーブのようなアロマが特徴で、口に含んだときには甘い風味を感じます。苦みは少なく、のど越しも良いので、かなりすっきりとした味わいです。
アメリカン・ペールエール
アメリカで作られるタイプのペールエールで、ホップの香りや風味が強く出ています。イギリスのホップの品種は、ハーブや紅茶のような香りですが、アメリカの品種は、グレープフルーツのような柑橘系の香りを持っています。
アメリカン・ペールエールではホップが多めに使われているので、柑橘系の香りと苦みがかなりしっかり感じられるところが特徴です。
日本ではヤッホーブルーイングが製造している「よなよなエール」が、このスタイルに属しています。コンビニなどでも簡単に手に入るので、興味があったらぜひ試してみましょう。
インディア・ペールエール(IPA)
IPAは18世紀に、イギリスから植民地のインドへと運ぶために作られたペールエールの一種です。長い航海の間に劣化してしまわないように、アルコール度数が高く、防腐剤として大量のホップが使われている点が特徴です。
ホップの香りと苦みが非常に強く、ペールエールの華やかな香りと相まって、とても個性的な味わいを醸し出しています。
アメリカ産ホップを使ったアメリカン・IPAもあります。
次回はペールエールの中でも特に強い個性を持つIPAについて、もう少し深く掘り下げて解説していきます。