ベルジャン・スロトングエール:酔っ払い注意!の爽やか系高アルコールビール

ベルジャン・スロトングエール:酔っ払い注意!の爽やか系高アルコールビール

ベルジャン・ストロングエール(Belgian Strong Ale)は、その名の通りアルコール度数が高い、「ストロング」なベルギービールです。
度数は最低でも7%、高い物なら11%以上あり、通常のビールの約2倍近い物になっています。

ベルギーで第一次世界大戦直後に生み出された「デュベル」がこのスタイルのビールの先駆者で、現在でも代表格の座を維持しています。現在ではベルギーだけでなく、アメリカ、デンマーク、イギリス、チリなど世界中で作られており、日本でも製造・販売を行っているクラフトビールメーカーがあります。

ベルジャン・ストロングエール

ベルジャン・ストロングエールの作り方

ビールのアルコール濃度は、発酵が行われる前の麦汁にどれだけの糖が含まれているかに左右されます。アルコールの元になる糖の量を増やしてやれば、それだけ度数が高いビールになります。

糖の量を増やす方法の一つは、麦芽の量を大幅に増やして、非常に濃い麦汁を作ることです。イギリスの高アルコールビールである「バーレイワイン」や「オールドエール」はこうして作られており、非常に濃いコクのあるビールになっています。

これに対し、ベルジャン・ストロングエールは麦汁の濃度は普通で、発酵の際に糖を添加してアルコールの量を増やす方法がとられています。この方法ならコクを強くせず、飲みやすさを維持したまま度数を高くすることが出来ます。使われる糖は氷砂糖で、全部アルコールになってしまうので、できたビールには甘みは残っていません。

ベルジャン・ストロングエールの特徴

最初に飲んで気付くのは、ストロングという名に反して「軽い」という点です。特にペール・ストロングエールはかなりあっさりとしており、ピルスナーのような軽さです。アルコールの刺激がわずかにある物の、ホップの苦みがあまりなく、エールの甘い香りを持つため、ほとんど気になりません。爽やか系で良いのど越し、華のある香りと、ぐいぐい飲みたくなるビールです。

ダーク・ストロングエールは、ローストした麦芽を使った濃色のビールらしく、カラメルのような麦芽の甘みからなる濃い味を持っています。しかし、こちらも苦みはなく、アルコールのきつさも感じられません。

度数が普通のビールの2倍近いことをあらかじめ知らなければ、普通に何杯も飲んでしまいそうになります。

項目詳細
原産地ブレーンドンク(ベルギー中部)
発酵の種類上面発酵(エール)
淡い麦わら色~金色(ペール)
濃い琥珀色~茶色(ダーク)
アルコール度数7~11%
麦、ホップ以外の原料糖類(氷砂糖)
最適温度10~13度
有名な銘柄(海外)デュベル(ベルギー)
デリリウム・トレメンス(ベルギー)
シメイ・ブルー(ベルギー)
サンタズ・リトルヘルパー(デンマーク)
など
有名な銘柄(日本)無礼講時間 ストロングゴールデンエール(ベアードビール)
ベルジャン・ストロングエール(厚木ビール)
梅錦ビール アロマティックエール(梅錦山川)
馨和-KAGUA-(ファーイーストブルーイング)
など

ベルジャン・ストロングエールの味

ストロングエールの「危険性」

ストロングエールの危険性

飲みやすいビールなのですが、ストロングの名に恥じず、胃に達すると一気に熱くなってきます。日本酒やワインに比べると度数こそ高くないものの、炭酸の刺激によって胃壁からのアルコール吸収が早まるので、急激な酔いをもたらします。飲みやすいために、油断して2杯、3杯と重ねると、お酒に強い人でもいつの間にかふらつくほど酔っぱらってしまうため、注意が必要です。

代表銘柄である「デュベル」は、古いオランダ語の方言で「悪魔」を意味し、開発者のアルバート・モットガルトの友人がこのビールを「まさに悪魔だ(nen echten duvel)」と評したことに由来します。

これ以外にも「ユダ」「サタン」「ルシファー」「ギロチン」「デリリウム・トレメンス(アルコール依存症患者の震え)」など、危険な名前の付いた銘柄が数多くあります。デリリウムの瓶には、酔っ払いの幻覚に出てくる「ピンクの象」がデザインされていることで有名です。
ついついたくさん飲んでしまうと、いつの間にか行動不能となってしまう、ベルジャン・ストロングエールの特徴を良く表しているといえます。

一気に飲むのももったいないので、急激な酔いを避けるためにも、ゆっくりと時間をかけて味わうようにしましょう。料理と共に味わうのもおすすめです。

ベルジャン・ストロングエールの種類

ベルジャン・ペール・ストロングエール

ベルジャン・ペール・ストロングエール

ストロングエールの中で金色のものがこちらです。デュベルのように色が薄めの物は、ゴールデン・ストロングエールとも呼ばれます。味わいはなじみの深いピルスナーに近く、爽快なのど越しと、エールビールの華やかな香りで非常に飲みやすいビールです。ビールが好きな人ならハイペースで飲んでしまいそうになりますが、そうすると一気に酔いが回るので、油断は禁物です。

鶏肉や白身魚、ホワイトソース、キノコなどと合わせるのがお勧めです。

ベルジャン・ダーク・ストロングエール

ベルジャン・ダーク・ストロングエール

ローストした麦芽を使っている、ストロングエールの濃色版がこちらです。色を合わせるため、氷砂糖はブラウンシュガーが使われています。味はペール・ストロングエールより濃く、甘みもありますが、そこまでどっしりとした強いコクはありません。ペールエールほどぐいぐい飲んでしまうこともないでしょうが、たかがビールと侮らないようにしましょう。

ダーク・ストロングエールは味の濃い肉料理と合わせたり、食後酒として嗜んだりするのが良いでしょう。食後なら急激なアルコールの吸収が抑えられ、気持ちにも余裕を持ってゆっくり味わえます。

次回は日本の暑い夏にもピッタリな、ドイツの黒ビール「シュバルツ」を紹介します。

お酒の雑学カテゴリの最新記事