デュンケル(Dunkel)はドイツのミュンヘンを中心とするバイエルン地方で作られているラガービールです。名前はドイツ語で「暗い」という意味で、ローストした麦芽を使用した褐色をしています。ミュンヘン由来なので、ミュンヒナー・デュンケルとも呼ばれます。
日本では「ドゥンケル」「ドンケル」などの表記ゆれもあります。
同じバイエルン州で多く作られている濃色のビールには、シュバルツ(シュバルツビア)があります。シュバルツは「黒」という意味で、その名の通り色は真っ黒です。デュンケルも黒ビールに入れられることもありますが、色は「暗い」にとどまり、黒ではありません。
私たちが良く知る金色のピルスナーを「昼」、シュバルツを「夜」とすると、デュンケルは「夕暮れ時」とでもいう色合いです。
デュンケルの特徴
デュンケルはピルスナーと同じ下面発酵で作られており、シャープでさっぱりした味をしています。ローストした麦芽のビスケットのような甘みとコクが苦みを和らげてくれるので、苦いビールが苦手な人でも抵抗なく飲めます。
色が濃いビールは味がくどいイメージがありますが、デュンケルの場合はラガービールらしいスッキリ感を持ちつつ、苦みと甘みがバランスよく調和した、非常に飲みやすい味です。
日本人的にはかなり受けが良いスタイルで、地ビールのみならず。大手のビールメーカーでもデュンケルをラインナップに入れているところが増えてきています。
項目 | 詳細 |
---|---|
原産地 | ミュンヘン(ドイツ) |
発酵の種類 | 下面発酵(ラガー) |
色 | 明るい茶色~濃い茶色 |
アルコール度数 | 4.5~5% |
麦、ホップ以外の原料 | 無し(小麦麦芽を使う物もある) |
最適温度 | 9度 |
有名な銘柄(海外) | ホフブロイ ドゥンケル(ドイツ) ヴァルシュタイナー プレミアム・ドゥンケル(ドイツ) ナイト・ライダー ミュンヘン・デュンケル(アメリカ) キャスティール デュンケル(ベルギー) など |
有名な銘柄(日本) | 吾妻橋麦酒 デュンケルタイプ(アサヒビール) サッポロ空模様 月夜のデュンケル(サッポロビール) 独歩 デュンケル(宮下酒造) 八ヶ岳地ビールタッチダウン デュンケル(八ヶ岳ブルワリー) など |
バーベキューのお供に
一番相性が良い料理は、何といってもウインナーソーセージ。どちらかといえば牛肉よりも、鳥肉や豚肉など、脂身が少ない肉、あるいは野菜とよく合うようです。バーベキューの時に、一杯目はさわやかなピルスナーで、いろいろと焼けたらデュンケル、おなかが膨れてゆっくり食べるようになったらシュバルツと、進行に合わせてビールの種類を変えると料理とビールの両方をより深く楽しむことが出来ます。
他の「デュンケル」の名前が付くビール
ドイツにはデュンケルの名を冠する違う種類のビールがあります。
見た目もよく似ているので、違いを知っておきましょう。
デュンケル・ヴァイツェン(デュンケル・ヴァイスビア)
ヴァイツェンは「小麦」の意味で、原料における小麦麦芽の比率が50%を超えるビールです。デュンケルと同じように、バイエルン州の特産品になっています。
ヴァイツェンは白ビールに分類される明るい金色ですが、ローストした麦芽を使った暗い色の物がデュンケル・ヴァイツェンと呼ばれます。普通のデュンケルが「濃い色の“ラガー”」なのに対し、デュンケル・ヴァイツェンは「濃い色の“小麦を使ったエール”」であるため、見た目は似ている物の、原料や製法、味は異なります。
デュンケル・ボック
ボックは北ドイツのアインベックという町で生まれたビールで、デュンケルと同じ下面発酵で作られるラガーです。ただし、アルコール度数は6.5~8%、凍らせて度数を高めたアイスボックなら8.6~14%と、かなり強いビールです。
17世紀にボックの醸造者がアインベックからミュンヘンへと引き抜かれたため、デュンケルやヴァイツェンと同じように南ドイツを代表するビールとなっています。色が濃く強いドッペルボックは、見た目がデュンケルと似ており、濃い色の物はデュンケル・ボックの名を名に関している物も多くあります
ボックは「オスヤギ」の意味があり、ヤギのキックの如き強さがあるから、この名前が付けられたともいわれています。普通のデュンケルと思ってうっかり間違えると、蹴っ飛ばされる羽目になるので、ドイツビールを選ぶときは注意しましょう。
中には「デュンケル・ヴァイツェン・ボック」という、どのスタイルなのかを判別しがたい製品もあります。
ひとまず、デュンケルだけなら暗い色のラガーと考え、ボックが付けば高アルコール、ヴァイツェンやヴァイスビアとついていれば小麦麦芽が使われて甘みがあると判別するのが良いでしょう。
次回はイギリスで生まれた”麦のワイン”の名を持つビール「バーレイワイン」を紹介します。