クリーク:サクランボを漬け込んだ甘酸っぱいフルーツビール

クリーク:サクランボを漬け込んだ甘酸っぱいフルーツビール

クリーク(Kriek)は、ビールにサクランボを漬け込むことで風味をつけるとともに二次発酵させたフルーツビールです。名前はフラマン語でサクランボのことで、キイチゴ(ラズベリー)を漬け込んだものは「フランボワーズ(Framboise)」という名前です。

漬け込むビールはベルギーのバヨッテンラント地方だけで生産されている、自然発酵ビールのランビックです。ランビックの醸造所は、多くの場合クリークやフランボワーズも生産しています。サクランボやキイチゴ以外の果物を漬け込んだものもあり、まとめて「フルーツランビック」の名で呼ばれることもあります。

クリーク
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ランビックとはどのようなビールか

ランビックとはどのようなビールなのか

クリークの素になるランビックは、空気中を漂っている野生の酵母を取り込んで作るビールです。原料には大麦の麦芽だけでなく生小麦も使用するので濁っており、乳酸菌も取り込まれて発酵を行うため、ヨーグルトのように酸っぱい味もします。

また、長い間熟成させるので、腐敗を抑えつつ苦くなりすぎないように、あえて古く苦みが飛んだホップを大量に使うところも特徴です。このため、古いホップに特有のチーズやホコリ、カビのような癖のある香りもします。1年から3年かけて熟成させ、長い熟成期間を経たものほど酸味が増します。

クリークの作り方

クリークの作り方

クリークを作るためのランビックは、6カ月~1年半熟成させたものが使われます。何カ月ものを使うのかは、それぞれの醸造所によって異なり、ベル・ビュー醸造所では6カ月の若いもの、リンデマンス醸造所では1か月半のものが使われています。

ベルギーでのサクランボの旬は7月なので、クリークも7月に作られます。ランビック1リットルに対して使われるサクランボの量は200~300g、多ければ400gにもなります。

漬け込んでから6カ月間熟成させれば、クリークの完成です。
熟成している間に果実の風味と色素が抽出されるとともに、酵母が果実に含まれている糖を発酵させ、さらなるアルコールと炭酸、乳酸が作り出されます。瓶の中でも発酵が進んで炭酸が出てくるので、クリークの瓶はコルクで栓をした上から針金や王冠で抑えることで、コルクが抜けてしまわないように工夫されています。

クリークの特徴

クリークの特徴

クリークの最大の特徴は、何といっても美しく鮮烈な赤さと、自然な甘酸っぱい味です。
この味はサクランボのそれに、乳酸発酵で生み出された乳酸の味がミックスされたものです。ジューシーな甘さと香り、乳酸発酵によって生まれた酸っぱさが、まさに液体のサクランボを飲んでいる気分にさせます。味の中には、サクランボの種に由来する香ばしさも感じられます。

元々ランビックは苦みが弱いビールなので、果実の味によって苦さは全くと言って良いほど感じられなくなっています。また、癖のある味やにおいも消えているので、飲みにくさはありません。

ビールでありながらビールとは全く異なる見た目、味、香りのお酒で、ビールが嫌いな人や、ちょっとおしゃれなお酒が飲みたい人におすすめです。フルーツビールなので、良く冷やしておくと甘みが強く感じられます。

様々なフルーツランビック

フランボワーズ

フランボワーズ

フランボワーズはキイチゴ(ラズベリー)をランビックに漬け込んだものです。ロゼのワインを思わせる酸味と甘みのバランスが良くとれており、食前酒にも適しています。色はクリークに比べると赤みが薄い色合いです。

クリークを作っている醸造所の多くは、フランボワーズも作っています。

カシス

カシス

カシスは日本ではクロスグリと呼ばれている果実です。カシスのリキュールは数多くあり、元々お酒との相性が良い果物であるといえます。色は紫がかかった暗い赤色で、泡も赤くなっています。甘さは控えめで、あっさり飲める味です。

日本ではリンデマンスのカシス、セントルイスのプレミアムカシスなどが手に入れやすい方です。

ペシェ

ペシェ

ペシェはフランス語で桃のことです。他の果物に比べると酸味が非常に弱く甘みが強いので、ペシェも飲みやすく優しい味わいをしています。色は薄い白から明るい小麦色です。リンデマンスの「ペシェリーゼ」、シャポーの「ペシェ」などがあります。

これら以外に、リンゴやバナナを漬け込んだフルーツランビックもあります。

次回はドイツ生まれの高アルコールラガー「ボック」を紹介します。

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