オールドエール:熟成によって生まれる複雑芳醇な風味

オールドエール:熟成によって生まれる複雑芳醇な風味

オールドエール(Old Ale)はイギリスで古くから作られてきた伝統的なスタイルのビールです。イギリス由来であることから、イングリッシュ・オールドエールの名で呼ばれることもあります。オールドの名は1年以上の長い熟成期間を経て作られることを意味します。

オールドエール

オールドエールの作り方

オールドエールはアルコール度数が高く、非常に濃い点が特徴です。

アルコール度数を高くするには、発酵の途中でアルコールの原料となる砂糖を追加する方法とたくさんの麦芽を使って麦汁を濃くする方法があり、オールドエールで用いられているのは後者です。

オールドエールでは麦芽の酵素によってでんぷんを糖に変える「マッシング(糖化)」という工程において、あえて高めの温度で処理をします。高めの温度で糖化をすると、酵母が分解できない糖であるデキストリンが増え、甘みやコクが強く残ったビールが出来上がります。

一次発酵を行った後は、樽や瓶の中で熟成と発酵が続いていきます。オールドエールの場合、発酵の期間は最低でも1年、時には数年にも及びます。他のビールではあまり見られない長い熟成期間が、オールドの名にふさわしい複雑な風味やコクを生み出します。

オールドエールの特徴

オールドエールの個性は熟成具合や材料の違いによって多様ですが、濃厚・複雑である点が共通しています。

オールドエールの多くは非常に濃い色をしています。これはローストした麦芽を使っているのみならず、長い熟成期間の間に酸化や熟成によって更に色が濃くなるためで、黒ビールのように見える物もあります。

香りはドライフルーツ、ナッツなど、甘さと濃さが混じった複雑な物で、熟成させたシェリー酒やポートワインを連想させます。長い熟成の間にホップの香りは飛ぶので感じられません。風味は麦芽の甘みが強く、ナッツやカラメルに近いものがあります。

昔のイギリスのパブでは、ビールは熟成前の状態で運び込まれ、店の保管庫で熟成させてから、飲み頃を見計らって提供されました。オールドエールも同様で、普通に熟成を待つ以外に、熟成段階の違う物をブレンドして出すことも行われていたようです。

項目詳細
原産地イギリス
発酵の種類上面発酵
明るい琥珀色~非常に濃い褐色
アルコール度数6~9%
麦、ホップ以外の原料小麦麦芽、生大麦、糖類が使われることがある
最適温度13度
有名な銘柄(海外)オールド・トム(イギリス)
フラーズ ヴィンテージエール(イギリス)
ノースコースト オールドストックエール(アメリカ)
シックスポイント グローバル・ウォーマー(アメリカ)
など
有名な銘柄(日本)八ヶ岳地ビールタッチダウン ロックボック
遺跡オールド(反射炉ビヤ)など

オールドエールの味

冬用オールドエール「ウィンター・ウォーマー」

冬用オールドエール「ウィンター・ウォーマー」

オールドエールは度数が高いので、冬の間に体を温めるお酒として飲まれることもあります。冬用として特別に作られるオールドエールは「ウィンター・ウォーマー(Winter Warmer)」と呼ばれます。度数が高めで、味は少しスパイシーさを感じます。現代のウィンター・ウォーマーはクリスマスシーズンの特別商品として販売されることが多いようです。

バーレイワインとオールドエール

オールドエールと似たスタイルのビールには、同じイギリスの長期熟成ビール「バーレイワイン」があります。バーレイワインは大麦(バーレイ)のワインの名の通り豊潤な香りと味があり、度数も10%を超えるものもあります。

オールドエールとバーレイワインは両方ともイギリスの長期熟成ビールで、両者の境目は少し曖昧です。バーレイワインはオールドエールに比べると歴史が浅く、オールドエールの一種に過ぎないという意見もあります。

どちらかといえばバーレイワインの方が濃い目でフルーティーな印象がありますが、特に気にせず銘柄ごとに自分の好みを見つける方が良いかもしれません。

次回は麦芽を燻製して作るスモークビール「ラオホ」を紹介します。

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