スコティッシュエール:口当たりのよいスコットランドビール

スコティッシュエール:口当たりのよいスコットランドビール

スコティッシュエール(Scottish Ale)はスコットランドで伝統的に作られてきた、エールビールの一つです。
スコットランドには、エディンバラで輸出向けとして作られた「スコッチエール」という、似た名前のビールが存在します。スコティッシュ(Scottish)で「スコットランドの」、スコッチ(Scotch)で「スコットランド産の」という意味で、スコティッシュエールもスコッチエールも同じものなのでは?と思ってしまいそうになりますが、違う特徴を持つ別種のビールです。

スコティッシュ・エール

スコティッシュエールの特徴

スコティッシュエールの特徴

スコティッシュエールは基本的に、あまり強い個性を持たないビールです。味は麦芽の甘みが支配的で、ホップの香りや苦みは殆どわからないレベルの弱さです。アルコール度数も低めで、最も軽いライトで3%前後、一番強いエクスポートでも通常のビール並みかやや弱い程度にとどまっています。

ビールはホップが利いていないとダメという人や、エールビールのような香り高さが必要という人には、スコティッシュエールはぼんやりしていて少々物足りないと感じるかもしれません。単体でたくさん飲むよりも、個性が強すぎず口当たりが良い点を活かし、料理と一緒に嗜んだり、おしゃべりやゲームをしながら飲んだりする楽しみ方をするのが良いビールです。

一部には、麦芽を乾燥させるときに、スコッチウイスキーと同様にピート(泥炭)を燃やした煙で香りを付けた製品もあります。このタイプは好みがはっきりと分かれる傾向にあり、焦げ臭いと感じるか、それとも逆に気に入ってしまうかは人それぞれです。

項目詳細
原産地スコットランド
発酵の種類上面発酵(エール)
金がかかった琥珀色~濃い茶色
アルコール度数2.8~3.5%(ライト)
3.5~4%(ヘビー)
4~4.5%(エクスポート)
麦、ホップ以外の原料無し
最適温度10~13度
有名な銘柄(海外)ベルヘブン 80シリングエール(イギリス)
ニューキャッスル スコティッシュエール(イギリス)
ベアリパブリック レッドロケットエール(アメリカ)
ウィー・マック スコティッシュエール(アメリカ)
など
有名な銘柄(日本)那須高原ビール スコティッシュエール(那須高原ビール)
軽井沢高原ビール スコティッシュエール(ヤッホーブルーイング&軽井沢高原ビール)
ハイランドピートスコティッシュエール(Yマーケットブルーイング)
I2U 70/-(反射炉ビヤ)
など

スコティッシュ・エールの味

スコティッシュエールの種類

スコティッシュエールは大きく分けると、最も軽い「ライト」、中程度の「ヘビー」、一番濃い「エクスポート」に分類できます。

ライトはアルコール度数が一番低く、麦芽の香りも中程度で、くどさも無い軽い飲み心地です。
エクスポートになると度数が通常のビール並みになり、カラメルのような香りに、エールビール特有のフルーティーな香りが加わり、はっきりとした味になります。

ヘビーはライトを少し濃くしたイメージで、エクスポートのようなフルーティーな香りは殆どありません。
エクスポートはスコッチエールと同様に輸出(エクスポート)向けなので、スコティッシュエールはあっさり目で低アルコールな物が正統派といえるでしょう。

スコッチエールとの違い

スコッチエールとスコティッシュエールは、名前が似ている上にどちらも褐色で、麦芽の味が強く、ホップの苦みと香りが弱い点は共通しています。しかし、中身はかなり違います。

スコッチエールは、ベルギーの市場に輸出することを意識して開発されました。ベルギーでは高アルコールのビールが好まれるので、スコッチエールはアルコール度数が最低でも6%以上、時には10%以上になるように作られています。また、使う麦芽の量を多くした上に、できた麦汁を長時間煮沸してカラメル化と濃縮を行うため、コクも強いフルボディのビールとなります。

一方のスコティッシュエールは、それほど濃くなく、比較的低アルコールな飲みやすいビールです。ヨーロッパでの伝統的なビールは、東洋でのお茶に相当する日常的な飲み物だったので、輸出用ではないスコティッシュエールは飲みやすいビールの方が良かったのかもしれません。

スコッチエールは強くて濃いビール、スコティッシュエールは少し軽めで口当たりがよいビールと覚えておきましょう。

名前に使われている「/-」の意味は?

名前に使われている/-」の意味は?

スコティッシュエールの銘柄を見ると、「/-」という記号が使われているものがあります。
これは古いイギリスの通貨である「シリング」の通貨記号(円=¥、ドル=$などと同じ)です。シリングは1492年に生み出され、1971年に廃止されるまでイギリスの通貨単位として使われていました。
昔のビールは麦芽の使用量によって1バレル(約163.6リットル)当たりの値段が決められていました。麦芽の使用量が少ないライトなビールなら安く、たっぷり使った濃いビールなら同じ量でも価格が高くなる仕組みです。

現代ではシリングも麦芽の量で決まる値段も無くなりましたが、ビールの濃さを分かりやすくするとともに、他の商品との差別化が図れるため、今でもシリングの記号を名前に入れているブランドが多数あります。
基本的にライトが60シリング、ヘビーは70シリング、エクスポートが80シリングとなります。

次回はドイツ生まれの金色のビール「ヘレス」を紹介します。

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