メルツェン/オクトーバーフェスト:お祭り用の特別なラガービール

メルツェン/オクトーバーフェスト:お祭り用の特別なラガービール

オクトーバーフェスト(Oktoberfest)とは、ドイツのミュンヘンで開かれる世界最大のビール祭り「オクトーバーフェスト」で提供される、長期熟成ラガービールです。3月に仕込まれることから、メルツェン(Märzen)の名前でも呼ばれます。

メルツェン/オクトーバーフェスト

世界最大のビール祭典オクトーバーフェスト

最近日本でもよく開催されるようになったビールの祭典オクトーバーフェストは、ドイツのミュンヘンで毎年開かれているお祭りが原型です。
ミュンヘンのオクトーバーフェストは、1810年10月に行われた、バイエルン王国皇太子ルートヴィヒとザクセン=ヒルトブルクハウゼン公の娘テレーゼの結婚式での催し物を由来としています。最初は競馬を始めとしたスポーツ大会であったものが、市民の受けが良かったことから毎年の開催が決定され、今日では世界最大のお祭りの一つに数え上げられるまでになっています。2015年度は来場者が590万人、ビールの消費量は770万リットルにもなったとのこと。

開催期間は16日間で、日付に関わらず10月の第一日曜日が最終日になるように調整されます。会場であるテレージエンヴィーゼ(テレーゼの緑地)は42ヘクタール(東京ドーム約9個分)の広さがあり、巨大なテントや移動遊園地などが設営されます。

メルツェン/オクトーバーフェストとは?

オクトーバーフェストとは?

元々、ミュンヘンの10月はビールを醸造するための新しいシーズンの始まりでした。ラガービールは低温で熟成するので、冷蔵技術が無い時代には秋から春にかけての寒い時期でないとビールが作れなかったためです。しかし、これでは夏の間はビールが作れずに飲むことも出来ないので、冷たい水や氷がまだ使用できる3月に仕込みを行い、夏の間も貯蔵しておけるビールが生み出されました。これがメルツェンの原型です。オクトーバーフェストは、夏を越したビールを、次のシーズンに新しい物を作るために飲み干してしまうための意味もあります。

3月に仕込みを行うから「メルツェン(3月)」、あるいは「メルツェンビア」、オクトーバーフェストで出されて飲み干すから「オクトーバーフェスト」「オクトーバーフェストビア」というわけです。オクトーバーフェストがテレージエンヴィーゼで開催されることから、「ヴィーズン」の名前もあります。

メルツェン/オクトーバーフェストの特徴

メルツェン/オクトーバーフェストの特徴

メルツェンは夏の間も貯蔵しないといけないので、濃い目に作ってアルコール度数を高めて腐敗を防ぐように工夫されています。3月から10月直前までの約半年に渡って長期の熟成(通常のラガーの熟成は数週間)を行うため、角が取れてまろやかな味になります。ホップの香りはかなり弱くなっており、苦みも弱めか中程度でクリーンな印象です。

現代のメルツェンは、19世紀にミュンヘンのシュパーテン醸造所のガブリエル・ゼードルマイル2世と、ウィーンのシュヴェヒャート醸造所のアントン・ドレハーによって生み出されました。友人であった二人は、ウィーンではドレハ-が開発したウィンナーモルトと、ミュンヘンのラガーの技術を合わせて、ウィンナー・ラガーという赤褐色のラガーを作り大いに評価されます。

一方、ゼードルはウィンナーモルトでメルツェンを作り、オクトーバーフェストで提供しました。これが非常に高い評価を受け、以降のメルツェンはウィンナーモルトを使った赤褐色のものが主体となりました。トーストのような軽い香ばしさと甘みに、ドライなのど越しと後味がウリです。

後にビールは金色の物が主体になったので、現代のメルツェンは色が金色に近いものも多くなっているようです。

項目詳細
原産地ミュンヘン(ドイツ)
発酵の種類下面発酵(ラガー)
薄い金~赤みがかかった褐色
アルコール度数5.1~6.1%
麦、ホップ以外の原料無し
最適温度9度
有名な銘柄(海外)シュパーテン オクトーバーフェスト
ホフブロイ フェスト
パウラナー オクトーバーフェスト-メルツェン
など
有名な銘柄(日本)サントリー クラフトセレクト メルツェン(サントリー)
ススキノビール メルツェン(薄野地麦酒)
遠野麦酒 ズモナ メルツェン(上閉伊酒造)
おたるワイナリービール メルツェン(おたるワイナリービール)
など

メルツェン/オクトーバーフェストの味

メルツェン/オクトーバーフェストの飲み方

オクトーバーフェストの飲み方

オクトーバーフェストではまず初めに、ミュンヘンの市章に扮して黒いフード付きマントを着た女性が馬に乗って先頭を行き、ビヤ樽を積んだ地元ブルワリーの馬車が続くパレードが行われます。そして正午に、ミュンヘン市長が「酒が出たよ!」の号令と共に最初の樽を開け、フェストが始まります。
オクトーバーフェストで使われるグラスは、「マス」と呼ばれる1リットル入りのジョッキです。お祭りだからか、あるいは「これで仕舞だから全部飲め!」ということでしょうか?

メルツェンと合う料理には、ソーセージ、鶏肉の丸焼き、卵とチーズ入りヌードル、ザワークラウト、バイエルン名物の雄牛のしっぽなどがあります。他には、熟成したバルサミコ酢を使ったイタリアン、テンメンジャンを使った中華料理、栗御飯、すき焼きなどもアリです。

微妙に違う? メルツェンとオクトーバーフェスト

世界のビールのスタイルを分類する「ビアスタイル・ガイドライン」では、メルツェンとオクトーバーフェストは別項目で記載されています。メルツェンは色が麦わら色から赤みがかかった褐色。これに対して、オクトーバーフェストは薄い金色から金色であり、ドルトムンダーというスタイルとほぼ同じであるとされています。伝統的なメーカーでは、オクトーバーフェストを「ヴィーズン」と「メルツェン」のバリエーションに分けていることもあります。
ただ、多くの場合はメルツェンとオクトーバーフェストは基本的に同じものとして扱われているようで、深く考えなくても楽しめます。

次回は果実のビール「フルーツビール」、野菜のビール「フィールドビール」、スパイスやハーブを使ったビールについて解説します。

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