常に最先端を求める大都会のブルワリーたち(東京都のクラフトブルワリー)

常に最先端を求める大都会のブルワリーたち(東京都のクラフトブルワリー)

日本の中心地である東京には多数の企業が本拠地を置いており、大手ビールメーカーもその例外ではありません。サッポロは札幌市、アサヒとサントリーは大阪市、キリンは横浜市が発祥の地ですが、現在ではどこも東京に本社を置いています。
「地ビール」といえばなんとなく地方のイメージがある上に、大企業がひしめく土地で中小のビール企業が生き残れるのかという疑問もありますが、実は東京には数多くのクラフトブルワリーが居を置いています。
日本の一大消費地で生まれただけあり、舌の肥えた消費者にも納得してもらえるよう、どこもかなりのこだわりを持ってビールを醸造している所ばかりです。

ホッピービバレッジ株式会社

ホッピービバレッジ

ビアテイストの低アルコール飲料「ホッピー」で有名なホッピービバレッジは、元々は1910年にラムネなどの清涼飲料水を作る会社として発足しました。1948年からは「本物のホップを使った本物のノンビア」であるホッピーを主力商品としていましたが、規制緩和直後の1995年からビール製造業にも参入しました。

現在は「赤坂ビール」「深大寺ビール」「調布ビール」「日本橋ビール」の4ブランド、7種類のビールを製造しています。
中でも個性が光るのが、赤坂ビールの一つ「赤坂ルビンロート」です。日本特有の綾紫いもを使ったベジタブルビールで、ドイツ語で真っ赤なルビーを意味するルビンロートの名に恥じず、ロゼワインのような美しいピンクの色合いをしています。日本の法律では芋はビールの原材料としては認められていないので発泡酒と表示されていますが、ビール品評会では「ベジタブルビール」という、れっきとしたビールの一分野として認められています。

銘柄味の印象
赤坂ビールピルゼン
(ピルスナー 6%)
ラガーの代表選手であるピルスナー。アルコール度数が6%と高めで、飲みごたえのある味です。
赤坂ビールミュンヘン
(デュンケル 4.5%)
ロースト麦芽を使用したデュンケル風の濃色ラガー。香ばしいけれど苦すぎず、アルコールも低めです。
赤坂ビールルビンロート
(フィールドビール 5.5%)
綾紫いもを使ったルビー色のビール。ほのかな甘みと軽い口当たりで、サワーのような味わいです。
深大寺ビールピルゼン
(ピルスナー 6%)
秩父山系の水を使い、低温で長時間熟成させて作られたピルスナー。味わいは濃い目ですが、口当たりはスッキリ。
深大寺ビールミュンヘン
(デュンケル 4.5%)
ペール、カラメル、ローストの麦芽をオリジナルのレシピでブレンドし、香りと苦みを日本人好みに調整しています。
調布ビール
(6%)
秩父山系深大寺の天然水を使ったラガービールです。無濾過なので酵母が生きており、まろやかな味がします。
日本橋ビール麦芽の甘みが強く、ホッピーに近い雰囲気の甘さが持ち味なラガーです。ホップはドイツ産のアロマホップを使っています。

Far Yeast ブルーイング

Far-Yeast-Brewing

Far Yeastは2011年創業と他のクラフトブルワリーと比べても比較的新参ながら、既に海外輸出にも成功している高レベルなビールを作っている会社です。日本で開かれている国際ビール大賞(世界で3番目に歴史がある国際ビール品評会)ではいくつもの賞を獲得し、その実力を証明しています。

現在のブランドは「東京」と「馨和 KAGUA」の2つで、「東京」は日本、「馨和」はベルギーに生産拠点が置かれています。
「東京」は原料に小麦を使用したミディアムライトボディなビールで、麦芽とホップのバランスを重視した「東京ブロンド」と、ホップの香りを重視してドライに仕上げたセゾンの「東京ホワイト」があります。
「馨和 KAGUA」はストロングエールに分類できる高アルコール、フルボディな強めのビールで、度数8%で淡い色合いの「Blanc」と、9%で赤みがかかった銅色の「Rouge」の2種類です。また、両方とも原料に日本独自の山椒をふんだんに使用し、ベルギー発祥の強いコクと強アルコールを組み合わせることで、非常に刺激的な味となっています。

銘柄味の印象
東京ブロンド
(5% ウィート)
小麦を使ったウィートビール。霞がかかったような金色と、ホップと麦芽のバランスが取れた味が特徴です。
東京ホワイト
(セゾン 5%)
苦みは弱めで、小麦の優しい甘みがあります。エール酵母の華やかな香りにより、ドライで瑞々しい味わいになっています。
「馨和 KAGUA」Blanc
(ストロングエール 8%)
ゆずと山椒を使ったスパイシーなビール。麦芽とホップの香りを抑え、スパイスの香りが前面に出されています。
「馨和 KAGUA」Rouge
(ストロングエール  9%)
山椒を使った赤銅色の馨和。麦芽の風味とホップの苦みを高いレベルで調和させた、コクのある強いビールです。

アウグスビール

アウグスビール

アウグスビールは2006年に設立されたメーカーです。醸造責任者の本庄啓介氏は元キリンビールの社員で、在籍中にドイツでブラウ・マイスターの資格を取得して「キリンの宝」と呼ばれた日本有数の醸造家です。自社の醸造施設は持っていないので、醸造だけは外部委託する「ファントムブルワリー」の営業形態をとっています。
大手のビールがどんな人・料理にも合わせるために無個性になり過ぎたことを鑑みて、より原点に近いビールとして、酵母や澱を取り除かない無濾過のビール造りにこだわっています。

アウグスビールの筆頭商品である「オリジナル」は樽生限定で、日本人にとって一番なじみが深いピルスナースタイルのビールです。ピルスナーは大手の主力商品として日本のビール市場の中心を占めていますが、アウグスのオリジナルは加熱処理や濾過をせずに酵母を生かしたままにして、樽に詰める際にも炭酸ガスを封入せずに二次発酵させる点が異なります。まさに「生」のビールというわけです。
オリジナルは店でしか飲めませんが、「ピルスナー」は瓶で販売されています。こちらは富士の地下伏流水を使って仕込みを行い、低温で長期熟成することによって樽生に負けない味を生み出せるように工夫されています。

銘柄味の印象
オリジナル
(ピルスナー)
無濾過、炭酸ガス封入無しの伝統的なスタイルのビール。瓶では販売されておらず、お店での樽生限定製品です。
IPA
(アメリカンIPA 7%)
ホップ多めのIPAの中でも、さらにホップを利かせたアメリカンスタイルです。鮮烈な苦みと芳醇な香りが特徴。
ブラック
(シュバルツ 4.5%)
ドイツ発祥のラガーの黒ビールです。黒ビールの中では一番スッキリした香ばしいほろ苦さがあります。
ホワイト
(ベルジャン・ホワイト 5.5%)
ベルギーで生まれた白ビールで、コリアンダー、オレンジピールが使われています。華やかかつ甘く、優しい味です。
ピルスナー
(ピルスナー 5.5%)
ピルスナーでは珍しく、小麦麦芽も使って味を調えてあります。料理との相性も抜群のバランスが良い味です。

TYハーバー

TYハーバー

TYハーバーは、東京でレストラン事業を展開している「タイソンズアンドカンパニー」のビール醸造部門として、1997年に設立されました。アメリカ西海岸の小規模醸造所をモデルにサンフランシスコの技術を導入し、アメリカンスタイルのエールを造っています。
ラインナップには、定番のペールエールやアンバーエール、ホップが利いたIPA、甘くて優しいウィート(ベルジャン・ホワイト)まで、幅広い好みに対応できる堅実なスタイルが揃っています。また、黒ビールにはインペリアルスタウトが入っているのが注目ポイントです。スタウトを作っているメーカーはそれなりにありますが、高めのアルコール度数を追求したインペリアルスタウトを出している所はなかなかありません。

これらの通常ラインナップに加え、「ブルワーズチョイス」として毎月異なった新しいビールを醸造するという、冒険的な商品展開を行っています。内容は非常に多岐にわたり、セッションIPAやアメリカンバーレイワイン、エキストラスペシャルビター(ESB)などの輸入ビールとしてよく見かけることが出来るスタイルから、ハニーエール、パンプキンビール、などの少しツウ好みのもの、さらにはトマトバジル、よもぎビールなどのオリジナリティあふれるものまで、まさに何でもありです。

実はTYハーバーではほとんどボトル販売は行っておらず、自社展開しているお店で消費しています。
タイソンズアンドカンパニーが経営している各レストランにはクラフトビアバーが設営されているので、そちらで飲むことが出来ます。また、トラック移動型ビアバー「EL CAMION」が全国を巡回しているので、東京以外でも樽生ビールを味わえます。
わずかな量ですが、お店で持ち帰り用としてボトルを販売してもらえるほか、ギフト用として申し込めば詰め合わせセットを配達してもらえます。

銘柄味の印象
ペールエール
(ペールエール 4.5%)
エールビールの基本型にして、TYハーバーの主力スタイル。フルーティーさと苦みが両立した金色のエールです。
アンバーエール
(アンバーエール 4.5%)
ローストした麦芽を使った琥珀色のエールです。少し香ばしく、麦芽の甘みが豊かなビールです。
ウィートエール
(ベルジャン・ホワイト 4.5%)
小麦麦芽をふんだんに使用したビール。バナナを思わせる香りと、うっすらと濁った色が特徴です。
IPA
(IPA 6%)
通常の3倍のホップを使用し、目が覚めるような苦みを持たせています。
インペリアルスタウト
(アメリカン・インペリアルスタウト 7.5%)
ロシア帝国王室向けにアイルランドやイギリスから輸出されていたスタイルの黒ビール。冬に飲むのがよさそうです。
ブルワーズチョイス月ごとの限定醸造ビール。強烈に個性的な物が多く、TYハーバーならではのスタイルばかりです。

10アンツブルーイング

10ants-brewing

株式会社フルムスが運営する醸造所で、2015年に市場に参入した新進気鋭のブルワリーです。自社の醸造施設は持っておらず、製造だけ外部委託するファントムブルワリーの形態をとっています。

ラインナップは全て「IPA」。イギリスからインドへの航海のために、アルコール度数を高めにしてホップも大量投入して作られたビールです。
鮮烈な苦みと、ホップとエール用酵母の出す華やかな香りが特徴で、日本のクラフトビールでも多くのビールが作られている愛好者が多いスタイルです。苦いのが嫌いな人には敷居が高いのですが、ホップが好きな人にはたまらないビールで、一度飲んだら虜になる人も少なくありません。
ホップの香りを強くするために、発酵が終わった最終段階でホップを入れる「ドライホップ」と、通常の数十倍の量のホップを入れる「ホップバースト」という製法を併用しているのが特徴です。
通常のIPAは度数が7%前後と高めにされていますが、通常のビールと同程度の4.5%前後のセッションIPAもあります。会議(セッション)でも飲めるという意味で、より気軽に飲めるIPAです。

銘柄味の印象
「The Fourth Dimension」 10ants セッションIPA
(セッションIPA 4.5%)
エールビールの基本型にして、TYハーバーの主力スタイル。フルーティーさと苦みが両立した金色のエールです。
「I’m G」10ants ジェットブラックIPA
(7.5%)
ローストした麦芽を使った琥珀色のエールです。少し香ばしく、麦芽の甘みが豊かなビールです。
「The Fourth Dimension Yellow」 10ants セッションIPA
(セッションIPA 4.5%)
小麦麦芽をふんだんに使用したビール。バナナを思わせる香りと、うっすらと濁った色が特徴です。
「Let’s Play Baseball」 10ants ウィートIPA
(ウィートIPA)
通常の3倍のホップを使用し、目が覚めるような苦みを持たせています。
「Wanna Go!」 10ants ブリティッシュスタイルIPA
(IPA 5.5%)
ロシア帝国王室向けにアイルランドやイギリスから輸出されていたスタイルの黒ビール。冬に飲むのがよさそうです。

次回は東京と双璧をなす大都会、大阪のクラフトブルワリーを紹介します。

天下の台所で生まれた個性派ブルワリー(大阪府のクラフトブルワリー)

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