温泉で飲みたいビールを作る:群馬県のクラフトブルワリー

温泉で飲みたいビールを作る:群馬県のクラフトブルワリー

群馬県のクラフトブルワリー

首都圏にありながらどこか田舎な雰囲気のある群馬県。しかし田舎ということは、ビール作りに必須のきれいな水に恵まれている証拠でもあります。山が多く、浅間山や草津白根山といった活火山があることで、草津を始めとする温泉地が豊富なのも群馬の特徴です。
温泉はつかるばかりでなく、泉質によって飲み水や酒の仕込み水として利用され、もちろんビール醸造にも使われています。水に含まれるミネラルの種類や量によってビールの味も大きく変化するので、それを使ってどんなビールを作っていくかが醸造所の腕の見せ所です。

隣接する新潟や長野、埼玉に比べると、群馬には有名なクラフトブルワリーは少ないものの、最近になってリニューアルしスタイリッシュな姿に生まれ変わったブルワリーが出るなど、まだまだ発展の余地が残されていることがうかがえます。

月夜野地ビール

月夜野地ビール

月夜野地ビールは、上越クリスタル硝子株式会社が運営する「月夜野びーどろパーク」内で作られているビールのブランドです。
月夜野びーどろパークはその名の通りガラスのテーマパークで、ガラスの工場見学、グラスアート美術館、クリスタルギャラリー、ガラスショップが集合しています。

醸造所はレストランの「ブリーデン」に併設されており、食事と共に出来立てのビールが楽しめる他、カフェ「カフェ・ド・ヴェール」では工房製のオリジナルグラスで飲むことができます。
パーク内で飲む以外にもショップで瓶製品のセットが購入できるため、お土産にも最適です。しかし、やはりガラス工房ならではの専用オリジナルグラスで飲むのが一番おいしそうなので、群馬に行ったときはぜひ訪れてみたい場所です。

銘柄味の印象
夕日の月夜野ピルスナー
(ピルスナー 5%)
ピルスナーが原産地であるチェコで作られたような、ボヘミアンスタイルのラガービールです。元の麦汁を濃い目にして、ホップの苦みを適度にすることで、麦芽の旨味を強調して全体的な味のバランスを整えています。
ロマンの里ヴァイツェン
(ヘフェヴァイツェン 5%)
原料の半分以上が小麦麦芽の、ドイツ生まれの白ビールです。甘さがウリのヴァイツェンとしては珍しくホップの深い苦みを持たせていますが、甘みによってそれを感じさせず、パンのような香ばしさ旨味を引き出しています。
水と緑のエール
(アンバーエール 5%)
適度にローストした麦芽を使用することで作られた琥珀色のエールビール。香ばしさとカラメルに似た甘みが、ホップの苦みとローストによる苦みを抑制してバランスを取り、飲みやすさとうまみを引き出しています。
蛍の里黒ビール
(シュバルツ 5.5%)
ドライさとコクが特徴の、ドイツ生まれの黒ラガーです。このビール専用のグラスは、ビールが入っている時には闇夜に蛍が光っているように見える仕掛けがあります。また、飲み終わって「昼」になると、蛍が住む小川が見えてくるようにもなっている二段構えのからくりです。

CHROA

CHROA

CHROA(クロア)は1996年に太田市が地域活性化のために、地元企業と協力して設立した第三セクター法人「夢麦酒太田」で作られているビールブランドです。
従来は「呑龍夢麦酒」のブランドで製造を行っていましたが、2016年からクロアを立ち上げて製品を一新しました。

プロデュースを行ったのは太田市出身の世界的なホイールデザイナーの片岡達也氏で、普通のクラフトビール企業にはない独特のセンスと感性のもとでラインナップをそろえています。人間の性やタブーをイメージしたデザインや味を第一にしており、消費者が求めるビールを作るのではなく、新しいビールの形を世界に「提案」するスタイルをとっているのが最大の特徴です。

銘柄味の印象
BLACK PARADE
(ベルジャン・ダーク・ストロングエール 8%)
ベルギー産のカラメル麦芽とチョコレート麦芽、スロベニア産のアロマホップを使用して作った、ベルギー発祥の高アルコール濃色ビールです。レーズンやカカオのような麦芽の香り、ホップのマイルドなアロマ、そして5週間もの二次発酵期間を経て作られる8%の強アルコールが、脳に心地よい酔いをもたらします。
IPA
(アメリカンIPA 8%)
8%ものアルコール度数を誇る強烈なIPAです。高い度数のために麦芽のうまみを引き出す濃い麦汁を作り、強いボディを備えさせています。さらに、苦み付けに2種類のホップを使用し、熟成の時に4種類のアメリカ産柑橘香系ホップを漬け込んで香りを最大限まで引き出しており、度数、苦み、香り、ボディ、旨味の何もかもが「強い」ビールにしています。
GUILTY TABOO WHITE
(ヘフェヴァイツェン 5%)
バナナやクローヴを思わせる香り、口に含むとほのかなフルーティーさと酸味が感じられる小麦のビール。IBU(苦み指数)は、一般的なビールが20前後なのに対し、このビールではわずか9。それでいて炭酸の泡はきめ細かく強めなドライさを持ち、料理にもよく合います。
TABOO RED
(ペールエール 5%)
イギリスの伝統あるペールエール。軽くローストした麦芽によるカラメルのような香りと、イギリス産のブーケホップによる気品ある香りが特徴です。
TABOO DOUBT GREEN
(ライトエール 5%)
麦芽に小麦を使い、アメリカ産の柑橘の香り系ホップカスケード、その三倍の香り成分を持つシトラを熟成時に付け込んで香りを付けたオリジナルスタイルのビールです。苦み度数は9で、味は非常にライト。夏ミカンのようなさわやかな香りがあり、のどを潤す最初の一杯にふさわしい飲み物です。

四万温泉エール

四万温泉エール

四万温泉は吾妻郡にあり、発見したのは坂上田村麻呂とも源頼光の家臣ともいわれる歴史のある温泉です。四万温泉は山中にあるために平らな土地が少なく農作物が作りにくいために、特産物を用意するのが難しい問題がありました。
代わりに温泉地ということで水が良く、水道水がそこらのミネラルウォーターと同等以上の品質を誇っています。そんな強みを活かすべく、新たな特産物として生み出されたのが四万温泉エールです。
四万温泉の源泉で仕込んだ地酒はありますが、実際に四万温泉内で作られているのはエールしかありません。

製造は四万温泉にある酒店「わしのや居酒屋店」にある、四万温泉エールファクトリーが行っています。
醸造所の規模が小さいために、取得している免許はビールのものではなく、酒税の安い発泡酒のものです。しかし原材料は麦100%で、節税のために用意されている大手のそれとは一線を画しています。また、発泡酒なので麦やホップ、米以外の副原料を自由に使えるところもメリットとなっています。

銘柄味の印象
摩耶姫
(ペールエール 5%)
イギリス生まれのエールビール代表格ともいえるビールで、そこにアメリカ産のマウントフッドホップを使用しているのが特徴です。アメリカではドイツ風のラガービールに使われることが多い品種で、強すぎないアロマと豊かな味を兼ね備えた品となっています。
おう穴
(アンバーエール 5%)
アメリカで人気の琥珀色のエールビールです。ローストしたビールを使ったエールらしいコクと共に、アメリカ産のカスケードホップによるグレープフルーツのような香りを備えています。
夜の訪れ
(スタウト 5%)
強くローストした麦芽を使用した、アイルランド産の黒ビール。発泡酒なので黒ビールとしては軽めです。また、イギリスが原産(アメリカ導入品種)であるゴールディングホップを使用し、マイルド且つ強すぎない穏やかな香りとなっています。

オゼノユキドケ

オゼノユキドケ

館林市の酒造「龍神酒造」が作るビールです。メイン製品の清酒「尾瀬の雪解け」は地下180mの井戸からくみ上げた水と兵庫県産山田錦を使用し、食事と共に嗜むのに適した酸味とうまみのある酒として造られています。
その技術を利用し、オゼノユキドケも食中酒として和食に合うようなビールになっているのが特徴です。エールビールとしてのホップやエステルの華やかな香りを強調したものではなく、和食の素材を活かした味と調和するような、スムーズな飲みやすさを追求しています。

その一方で、IPAやヘビーヘビーのような濃厚な季節限定品もあり、普段の製品は食事と共に、限定品は単体でそれぞれ楽しめるような組み合わせとなっています。

銘柄味の印象
ホワイトヴァイツェン
(ベルジャンホワイト 5%)
ドイツ風の白ビールヴァイツェンに、ベルギーの白であるベルジャンホワイトを組み合わせた、オリジナリティのある白ビール。ベルギービール特有のフルーティーさと、小麦のビールならではの優しい甘さが特徴です。
ブラウンヴァイツェン
(デュンケルヴァイツェン 5%)
ヴァイツェンの材料の一部にローストした麦芽を使用した、褐色の白ビールです。重量感のあるカラメル風の甘みが白ビールの果実のような甘みとバランスをとっています。
IPA
(アメリカンIPA 5%)
毎年1回だけ、季節限定で販売されるビターなビール。アメリカ産のカスケードホップを通常の5倍も投入して作られており、柑橘のような新鮮で瑞々しい香りと、予想外の極めて強い苦みが特徴です。
ヘビーヘビー
(バーレイワイン 8.5%)
毎年冬頃にだけ少数生産される、イギリス生まれの高アルコールビールです。ブランデーを連想させる香り、とろみのある舌触り、アルコール感、甘みと苦みが共に強い、いろいろな面でヘビーなビールです。

次回は岐阜県のクラフトブルワリーを紹介します。

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