日本の酒発祥の地:奈良県のクラフトブルワリー

日本の酒発祥の地:奈良県のクラフトブルワリー

奈良県のクラフトブルワリー

日本の文化において古来より重要な位置を占めてきた奈良県は、「奈良流は酒造り諸流の根源なり」と言われるほど、日本酒の文化にも深く関わっています。桜井市にある大神神社は酒造りの神を祀った日本最古の神社で、奈良市郊外の山間にある昇暦時は日本酒造りの基幹技術のほとんどが開発された場所です。
そんな場所である故に、奈良県はビールよりも日本酒の製造の方が主力でした。現在でもクラフトブルワリーの数は近畿の他の件に比べると少ないままです。

リゾート地の曽爾高原では、1997年の規制緩和直後からクラフトビールの製造が行われていたのですが、流通量があまり多くないビールのままです。同時期には大和高田市で創業した「ヤマトビール」があり、製造する「倭王」はおいしいと定評があったのですが、2000年に操業停止してしまいました。
それから10年以上、奈良県のクラフトブルワリーは曽爾高原ビールだけだったのですが、2015年以降は小規模なブルワリーが再び誕生し始めました。

それでは、日本の酒造り発祥の地で作られるビールを見ていきましょう。

曽爾高原ビール

曽爾高原ビール

曽爾(そに)高原ビールは、高原リゾート「曽爾高原ファーム」に置かれたビール醸造工場「麦の館」で作られているビールです。曽爾高原は奈良県から三重県にまたがる室生赤目青山国定公園の中にあり、秋には辺り一帯がススキで覆われ、銀世界の風景になることで有名です。
曽爾高原ファームは、観光案内所などが入ったメインハウスの「すすきの館」。併設のビール醸造工場「麦の館」の他、ハーブ園をはじめ、ゆず農園、桑畑などがあり、奥には露天風呂 「お亀の湯」があります。

麦の館で作られるビールはドイツのブルーマスター(国家資格の醸造士)直伝の技術によって製造されています。ドイツの「ビール純粋令」に基づいて、麦とホップ以外の副原料を使用しない作り方が基本です。
仕込みに使う水は、日本百名水にも選ばれた曽爾高原の地下水を使用し、酵母を残したままの無濾過の状態で瓶詰めされているのが特徴です。ラインナップはドイツのビアスタイルのものが主体で、3種類のレギュラー製品と、3種類の季節限定品があります。
すすきの館のレストランで樽生のビールを飲めるほか、特産物店で地元のお土産と共に購入可能です。通販でも入手可能ですが、流通量はかなり少ないので、いつでも手に入れられるわけではありません。

ゴールデンラビットビール

ゴールデンラビットビール

ゴールデンラビットビールは、2015年9月16日に桜井市で創業したクラフトブルワリーです。代表である市橋氏はビールを通して奈良を盛り上げていきたいという願いから、クラフトビール企業を立ち上げました。
ラビットの名は、桜井市の三輪にある大神神社境内に置かれている「撫で兎」に由来します。この神社は日本最古の神社の一つであり、主祭神である大物主大神(おおものぬしのおおかみ)は、稲作豊穣、疫病除け、そして酒造りの神です。つまり、酒の神を祀った、日本で最も古い神社ということになります。酒造が軒下に杉玉を吊るす習慣は、この神社の醸造安全祈願祭りが起源で、今も昔も日本の酒造メーカーにとっては特別な場所です。
「撫で兎」は参集殿の中に置かれている大きな兎の像で、撫でるとその場所の痛みが治癒するご利益があると言われています。

最初はビールの販売のみを行っていましたが、2015月12月7日にビール販売店「ゴールデンラビットビール 生駒本店」と共に、オリジナル銘柄の「そらみつビール」を販売開始しました。さらに、クラウドファンディング「Makuake」を活用して、奈良県産のお米「ひのひかり」を使ったビールを開発するなど、現代ならではの企業展開を行っています。
2016年11月1日には、近鉄新庄駅前にある「永谷武道具店」の店内に、2号店の「ゴールデンラビットビール 葛城店」をオープンしました。武道具店内にビール売り場があるのは、なかなか斬新です。
自家醸造設備はまだ持っておらず、醸造は新潟にあるエチゴビールに委託する製造形態をとっています。

ならまち醸造所

なら麦酒は2017年3月30日に奈良市内にオープンしたビアバー「ならまち醸造所」が作るビールです。それまでに奈良県内で他にビールを醸造していたのは、曽爾高原ファームだけ(ゴールデンラビットビールは県外の企業に委託醸造)で、ならまち醸造所は奈良市内では唯一の醸造企業となっています。
店主の青山氏はかつて建設コンサルタントを務めており、退社後に実家の青果業を手伝っていましたが、「自分でつくった方がいっぱい飲める」「自分でつくれば、好みに合わせて自分の好きな味のビールが実現できる」と考えて、醸造化の道を選びました。

まず、岡山県の吉備土手下麦酒醸造所で2年間の修業を積み、醸造技術を習得したそうです。
お店兼醸造所は倉庫の1階部分を改装したもので、2つのテーブルと、アメリカ産チェリー材の1枚板を使用した立派なカウンターがあります。カウンターの奥から熟成室を見ることが出来るようになっています。

作っているビールはペールエールの「ならまちエール」と、アメリカンウィート「あっさりウィート」の2種類で、どちらも無濾過の酵母のうまみと甘さが感じられる品です。そして青山氏が修業した吉備土手下麦酒のゲストビールが2種類作られています。今後はオリジナルのビールを6種類に増やしていく予定だそうです。
料理は奈良県産野菜、大和ポークなどを使った料理を提供している他、クラフトビールに合うおつまみ的なものもあり、気軽に楽しめます。

次回は滋賀県のクラフトブルワリーを見ていきましょう。

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