滋賀は京都に近い場所であったので、古くから開発されて商業が盛んであり、戦国時代には「近江を制する者は天下を制す」とまで言われた場所でした。近江商人といえば優秀な商売人として知られており、現在でも1人当たりの県民所得が全国4位と豊かな県です。
クラフトビールに関しては、全国的に見るとそれほど盛んな方ではなく、県内にあるクラフトブルワリーは3つだけです。しかし、この3つともが、ビール規制緩和によるクラフトビール解禁年の1997年からビール造りを始め、現在に至るまで一社もつぶれることなくビール事業を続けているベテランぞろいです。また、樽生ばかりでなく瓶製品も出しており、全国どこでも入手出来るようにするなど、商魂たくましいところを見せています。
さすが近江商人といったところです。
長濱浪漫ビール
長濱浪漫ビールは長浜市で有名な酒販店「リカーマウンテン」の子会社で、1995年に設立されました。クラフトビール解禁直後の1997年からビール製造を始めており、日本のクラフトブルワリーの中でも特に歴史が古い企業です。
長浜市は、滋賀県の北東部、琵琶湖のほとりに位置し、羽柴秀吉が築城したとされる長浜城の城下町として古くから栄えました。長浜浪漫ビールは米川(長浜城の外堀)のほとりに江戸時代に建てられた、米蔵を改造した建物にあります。
建物は2階が醸造所で、1階は直営のレストランパブ「長浜浪漫ビール ブルワリーパブ」となっています。吹き抜けからは2階にある醸造所を眺めることができ、近江牛をはじめとする地元の食材をふんだんに使用した創作料理と出来たてのビールが味わえます。
ビールのラインナップは、ペールエール、ピルスナー、ヴァイツェン、IPAなど、クラフトビールの中ではスタンダードなスタイルが揃っています。いずれも副原料を使用しない麦芽とホップ100%の、無濾過で酵母が生きている、クラシックなつくりが特徴です。
ブルワリーパブはもちろん樽生が飲めますし、店内にあるショップでも買うことができます。
ちなみに、2016年からはウイスキーの醸造も始めています。
びわこいいみちビール
びわこいいみちビールは甲賀市の「滋賀酒造」が製造するビールブランドです。滋賀酒造は1926年(昭和元年)創業の造り酒屋で、大吟醸「貴生娘」や焼酎「頂」の蔵元です。
ビールの醸造は1997年から開始しており、長浜浪漫ビールと同様にかなり早くからビール造りに参入した企業の一つです。水は飯道山の伏流水、麦は地元産の大麦を原料として使用し、完全無濾過でビール本来の味わいを保っています。
直営店の「ビアレストラン寿賀蔵」は酒蔵の内部を改装して作られたバイキング形式のレストランで、出来立ての樽生ビールを飲むことができます。店内にはビールの醸造プラントが設置されているので、ビール造りの工程を勉強する役にも立ちそうです。レストランは完全予約制なので、訪れる前には連絡が必要です。
また、滋賀酒造ではお酒以外に清涼飲料を作っており、売り上げの一部が琵琶湖の保全に寄付される「びわ湖サイダー」や、某有名コーラに似たデザインの「コウカコーラ」などが売られています(甲賀は“こうが”ではなく“こうか”と読みます)。
近江ブルーメンビアー
近江ブルーメンビアーは、日野町にある農業公園型テーマパークの「滋賀農業公園ブルーメの丘」で作られているビールです。ブルーメの丘はドイツのバイエルン地方の農村をテーマにしたデザインのパークで、牧場や農園、広大な花畑、醸造所、石窯パン工房やソーセージ工房など、様々な施設が並んでいます。食べ物だけでなく遊びの施設も豊富で、ゴーカート、ボート、アーチェリー、レーザークレー射撃、パターゴルフ、乗馬まで、1日を充実して遊べる場所です。
ビールは園内の「村」ブロックにある醸造所で作られており、窓から醸造の様子を見学できます。
ドイツ風のテーマパークなので、ビールももちろんドイツ風のスタイル。製法もドイツに倣い、機材・原料もドイツ産のものを使っています。水は綿向山の伏流水です。
醸造所には石窯パン工房とソーセージとビールを出す屋台が併設されており、そちらで出来立てを飲むことができます。また、「街」エリアにあるバイキングレストラン「エーデルワイス」、バーベキューハウス「アルペンローゼ」、ピザカフェ「リーリエ」などでも提供されています。夏以外では、樽生で提供されているのはピルスナーだけですが、売店ではこれ以外のスタイルの瓶製品も用意されています。
ブルーメの丘の親会社である株式会社ファームは、他にも農業型公園テーマパークをいくつか展開しています。ブルーメの丘と同様にクラフトビールを醸造している所もあり、それぞれが異なる個性のビールを作っています。
次回は和歌山県のクラフトブルワリーを見ていきましょう。