「日本の縮図」な県のクラフトブルワリー:兵庫県のクラフトブルワリー

「日本の縮図」な県のクラフトブルワリー:兵庫県のクラフトブルワリー

兵庫県のクラフトブルワリー

兵庫県は南北に長い県域を持ち、近畿地方の府県で最大の面積を持つ非常に広い県です。南北に長いため、工業地帯から都会な港町、農業や林業が中心の地域、水産業が盛んな地域から豪雪地帯に至るまで、日本の縮図といわれるほど多様な地域が集まっている面白い県となっています。

そんな土地であるために特産物がたくさんあり、お酒もその一つです。特に伊丹や灘は江戸時代から、日本有数の酒造地域でした。伝統的な日本酒ばかりでなく、新しい商品の研究開発にも熱心で、1996年の規制緩和以降はビールの醸造にも取り組み始めた企業も数多くあります。

今のところ、兵庫県のクラフトブルワリーは神戸を中心とした県南部に集中しており、北限は篠山市の丹波篠山ジグザグブルワリーとなっています。もっと北の丹波市にもあったのですが、現在は製造中止しており、日本海側に接する地域にはクラフトブルワリーがあったことはありません。

南部だけでなく、北部にもクラフトビールの波が伝わっていくことが期待されます。

KONISHIビール

KONISHIビールは伊丹市の酒屋「小西酒造」が製造するビールのブランドです。

小西酒造の起源は1550年、初代小西宗雄が薬問屋と並行して濁酒造りを始めたことと言われています。伊丹のみならず日本全体の酒造の中でも、特に古い歴史を持つ老舗です。

現在は、主力商品の清酒「白雪」をはじめとして、吟醸酒「大褒寿」「蒼瑠璃」「ひやしぼり」、焼酎「富士」、白雪をつかった梅酒や柚子酒といった製品を展開しています。

実は日本酒ファンのみならず、ビールファンにとっても小西酒造は有名な存在です。日本におけるクラフトビール解禁から10年前、小西酒造は日本でいち早くベルギービールを輸入し始めました。伊丹市とベルギーのハッセルト市が友好姉妹都市を結んだ関係であったことも、いち早く輸入を始めることが出来た要因だったのかもしれません。

1988年11月、ベルジャンホワイトの中で代表的存在である「ヒューガルデン・ホワイト」を皮切りに、ベルギーの様々な醸造所と取引を行っています。全国のスーパーや酒の販売店、通販で売られている様々なベルギービールは、小西酒造のおかげで買うことが出来るという事です。

代表取締役社長である小西新太郎氏は、ベルギービールを日本に広めた功績から、1999年9月11日に日本人として初めて、ベルギーより「ベルギービールの騎士(La Chevalerie du Fourquet des Brasseurs)」として認定されました。

KONISHIビールは、ベルギーのビール文化と日本酒の醸造技術を組み合わせることで、より個性的なビールを作ることが出来るのではないかというアイデアから始められました。醸造設備はベルギーからの輸入品で、醸造士もベルギーから招いた人物を起用しています。レシピはベルギービールのものを基本とし、それに日本人好みの要素を取り入れたオリジナルです。

六甲ビールブルワリー

六甲ビール

六甲ビールは神戸市北区の有馬温泉のほど近く、六甲山麓に醸造所を構えるクラフトブルワリーです。日本でのクラフトブルワリー解禁の直後、1997年にビール免許を取得し、現在までビール造りを続けている、ベテラン企業です。

創業者の中島氏は元々食品プラント開発エンジニアでしたが、ドイツへの出張の際に飲んだビールに魅せられ、一念発起して醸造所を立ち上げました。

最大の特徴は、醸造所で使われている機械は、全て中島氏が、開発、設計、製作、調達までを担当した完全オリジナルマシンであるという点です。中でも麦芽粉砕機は、速やかな仕込みと澄んだすっきりした麦汁をつくり出すため、欠かせない存在となっています。

また、ボトルへの充填、ラベル貼りなどの機械も全て中島氏のオリジナルで、特にケグ(樽)ウォッシャーは水洗浄と薬品洗浄、さらに炭酸ガスの充填までがワンタッチでできるという優れもの。こうした機械によってオートメーション化がかなり進んでおり、有名な企業ではありつつ、比較的コンパクトな醸造所となっています。

ビールはイギリスやドイツのビールを参考にしつつ、「日本人の味覚に合う」味を目指しています。仕込み水は50mの岩盤からくみ上げられた、六甲山を水源とする地下水です。

2012年には「ジャパン・アジア・ビアカップ2012」において金賞を受賞するなど、実力もお墨付きです。

あわぢびーる

あわぢびーる

あわぢびーるは淡路島において、「淡路ハイウェイオアシス」を運営する会社「URA」が醸造しているビールブランドです。淡路ハイウェイオアシスは淡路サービスエリアと直通道路で連結されている淡路島公園にあります。

アトリウムを中心としてレストラン、カフェ、物産展などが揃っており、鯛やトラフグをはじめとする新鮮な魚、淡路牛や淡路ポーク、たまねぎなどのグルメを楽しめます。

淡路島公園には広大な緑地空間があり、自然のままに残された森林の間を縫う遊歩道や、展望広場、大型遊具や親水公園などがあり、それだけで1日中遊べる場所となっています。

 

あわぢびーるは淡路ハイウェイオアシスのオープンと同時にスタートしました。当初はラインナップが2銘柄だけでしたが、順調に業績を伸ばし、2917年現在には6銘柄まで増えています。

ビールは非加熱処理で濾過も行わないため、酵母が生きたままになっているのが特徴です。また、手作りにこだわっており、麦汁の抽出から醸造、ボトルへの充填からラベル貼りまで、一つ一つを職人の手で行っています。同じ職人づくりであっても機械を自分で作ってオートメーション化を進めている六甲ビールとは、また別の方向性を目指したビールであると言えるでしょう。

あわぢびーるは通販で買うことも出来ますが、ショップで売っているのは淡路ハイウェイオアシスのみとなっています。

次回は岡山県のクラフトブルワリーを見ていきましょう。

お酒の雑学カテゴリの最新記事