ウィスキーとビールは同じ物?大麦のジュースを蒸留するとウィスキーになる!
独立騒動で話題になっているスコットランドは、スコッチ・ウィスキー発祥の地と言われています。ウィスキーそのものもアイルランド地方が発祥だという説が有力です。
ウィスキーといえば、洋酒の代表格として昔から日本でもよく飲まれていましたが、その原料や製法は意外と知られていません。ザックリと原料を説明すれば、ウィスキーは大麦とその他の穀類から出来ています。
大麦から作る酒と聞いて、すぐにイメージするのはビールでしょう。実はウィスキーはビールを蒸留して作る酒のようなものです。まぁ、ウィスキーにホップは入れませんので、まったく同じ酒ではありませんが、少なくとも大麦を砕き、醗酵させる段階までは、ビールもウィスキーもその工程はほぼ同じです。ちなみに醗酵はオープンな樽で行うため、ビールのように炭酸が入ることはありません。
ウィスキーはそうして出来た“麦のジュース”を蒸留する事によって生まれます。ウィスキーの蒸留器で有名なのは魔女の帽子のような円錐形の蒸留器で「ポットスチル」と呼ばれており、ウィスキーの記念ボトルには、このポットスチルの形をした製品もあるので、見たことがある人もいるでしょう。この蒸留器を使って通常は2度蒸留すると、無色透明なアルコール度数が40~60%という強烈なスピリッツが生まれるわけです。
ポットスチルの蒸留器
ジャックダニエルの樽
出典元:whiskey and evaporation / christophercjensen
“ジャックダニエルはバーボンじゃないとか、そういう話はまた別の機会に。樽に入ったウィスキーが次第に熟成している様子がわかる画像。だんだん量が減っていくのもリアル。この現象を「天使の分け前」というのだが、その話もまた別の機会に…”
スコッチウィスキーの定番『シーバス リーガル』
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その昔ウィスキーは無色透明だった?!
で、実は昔のウィスキーはこのままの状態で飲んでいました。ウィスキーの語源はゲール語の、“ウシュク・ベーハー (uisge beatha)”だと言われていますが(諸説有り)、その意味は「命の水」です。ヨーロッパの他の地方でも酒を蒸留して作る蒸留酒は、その強烈なアルコールから気付け作用があるとして、「命の水」という意味の名前をつけられている物も少なくありません。
ただ無色透明時代のウィスキーは味もなく、強烈なアルコールを飲んで喉が焼け付くような感触や、体の芯から火照ってくるような感覚を楽しむモノでした。それが現在ような琥珀色のウィスキーに変わったのは、別にウィスキー職人が新しい味の酒を求めて改良したのではなく、偶然の産物です。
今でも日本で入手可能な無色透明なウィスキー「ジョージアムーン」
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このウィスキーは、アメリカの禁酒法時代に作られた「ムーンシャイン」と呼ばれる密造酒をイメージしているので、ちょっと昔々のウィスキーとはちがうけど、無色透明なウィスキーには違いない。
戦争のせいで課せられた大増税!
現在のウィスキーが生まれたのは18世紀ころだと言われています。その頃のヨーロッパは世界中に植民地を広げただけでは飽き足らず、お互いの国が利権を争って、各地で戦争が繰り広げられてたのです。戦争というのは莫大な費用が必要で、その戦費を確保するために、当時の政府は増税しても文句が出難い、タバコや酒にべら棒な税金を課しました。
馬鹿みたいな高額の税金をかけられて商売に打撃を加えられたのは、酒造メーカーです。困った酒造メーカーは、悪政に対抗して密造酒を多量に作り始めました。ただ街中で蒸留酒なんか作っていたら、すぐにバレてしまいますので、郊外に密造工場を作ったわけですが、大麦の発芽を止めたり、蒸留するために使う燃料も十分に手に入れられなかったため、スコットランドでは独特の方法が編み出されました。
それはスコットランド地方の郊外に普通に掘り出される「泥炭(でいたん ピートと言う)」を燃料に使ったのです。ピートは古代に育った植物が半石炭化したモノで燃料の質としてはあまりよくはありません。しかし怪我の功名といっていいのか、密造酒にはピートを燃料にしたことで、「ピート香」と呼ばれる独特の香りがつきました。
そして何より密造業者が困ったのは、出来上がった酒の貯蔵場所です。色々考えた結果、樽に詰めて地中に埋めるという方法が使われるようになりました。そうして多量の密造酒を隠したわけですが、そのうち業者のミスなのか、何か事情があったのかは不明ですが、埋めたままで数年間放置されたウィスキーが出てきたのです。
放置された樽の中身は? ウィスキー誕生の瞬間!
アルコール度数の高い酒ですから、何年放置しても腐りはしないのですが、樽の蓋をあけた業者は中身を見て驚きました。樽の成分(主にタンニン)が溶け出し、無色透明だったウィスキーは琥珀色の液体に変貌していたのです。そしてピート香を含む馥郁とした香りに、今まで無味だったウィスキーはまろやかで複雑な味がついていました。
脱税目的で偶然できたウィスキーは大人気を呼び、これ以後ウィスキーは蒸留後に樽に詰めて寝かせる「熟成」という工程が加わったのです。そんな熟成されたウィスキーが世間に広まった頃、イギリス王であったジョージ4世が、このタイプのウィスキーを愛飲した事をきっかけに、酒の税金が引き下げられると同時に、政府公認のウィスキー蒸留所も誕生しました。そして当時培われた製法は、今でもスコッチ・ウィスキーのディストラリーに受け継がれているのです。
スコットランド郊外で野積みされるピート
出典元:Peat piles, Sedgemore / C.K.H.
“スコットランド地方は湿地帯が多く、郊外の土を掘り返すと、まだ完全に石炭化していない泥炭がいくらでも掘り出される。これを適当な大きさにして干したあと、燃料にて使う。ただし燃料としての質はあまりよくない。”