灘(兵庫県)、西条(広島県)と並び、「日本三大日本酒の主産地」として知られる京都の「伏見」。
この伏見を月に1度訪問し、蔵元や蔵人に日本酒の魅力をお聞きする連載企画、「伏見酒蔵四季巡礼」。
第1回目は、『英勲』で知られる齊藤酒造株式会社の齊藤透代表取締役社長に、日本酒が持つ可能性についてお話をお伺いしました。
日本酒は、器の変化も楽しみに盛り込んだお酒
この記事を読まれている方の中には、日本酒の奥深さに魅入られつつ、その奥深さに少し戸惑っているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
例えば、日本酒を味わう酒器。
いつもお店で注文すると桝に入ったグラスで運ばれてくるけど、正直、私には飲みづらい。
備前焼や清水焼の酒器なんて、我が家には置いていない。
いったい、どんな器で飲めばいいのだろう。
そんな疑問を持つ方はいらっしゃいませんか?
「いや、どんな酒器で飲んでも大正解なんです!」
と笑顔で語ってくれるのが、齊藤酒造代表取締役社長の齊藤透さん。
「西洋では、長い年月をかけワインを最良の状態で堪能できるワイングラスを開発しました。
ところが日本では、お猪口があり、ぐい飲みがあり、桝があり、そして最近ではワイングラスでも味わっています。コップ酒に親しんでいる方もいますよね。
これは、多彩な酒器で楽しむことができるという東洋的な感覚であり、酒器を変えて楽しむという一つの価値を満喫できるということなのです」
日本酒は、「時空」に酔いしれる酒
齊藤酒造は、今年創業から120年を迎えます。
全国新酒鑑評会で、歴代最長となる14年連続金賞を受賞。
地元、京都・大阪をはじめ、東京でもたくさんのファンを持つ蔵です。
齊藤社長は、日本酒の持つ世界を「時空」という言葉で表しています。
「日本酒は、『吟醸酒』や『本醸造』など製法の違いによる広がりを感じ、5℃ごとに名付けられた温度の変化による驚きを感じ、酒器の素材や色合い、形状による奥行きを感じ、さらに、四季折々の旬の様々な食材との出会いに心打たれます。
正に、広大な多次元の「時空」の中で楽しめるのが日本酒の魅力だと感じています。」
地域特性を色濃く反映した齊藤酒造の日本酒
更に齊藤社長は、日本酒の魅力として地域特性を色濃く反映していることを挙げます。
「全都道府県に日本酒の造り酒屋があります。
これは、全都道府県に日本酒を求める消費者がいるということなんです。
その地域の米と水と人が醸している日本酒は、地域の特性を色濃く反映しているものなのです」
数値化できる味わいだけではない、その奥に広がる地域が育んできた物語。
齊藤酒造の場合、
京都府産の米と伏見に脈々と流れる水、そして京都人の感性を生かした巧みな酒造りが特徴。
「京都の造り酒屋」だからこそ、京都の土地にこだわった日本酒を飲み手に届けています。
「私の理想としては、
例えば『古都千年』を手に入れた人がじっくりと味わいながら、
『あ、京都の酒だな。
この間京都に行ったとき、あの名庭園の枯山水のお庭はきれいだったなぁ。
あのお店で食べた料理はおいしかったなぁ』
と、京都に思いを馳せるきっかけに『古都千年』がなれば京都の造り酒屋として嬉しいですね」
取材後記
理知的かつ時に情熱を交えて日本酒の魅力を語る齊藤社長。「日本酒とマッチしたおすすめの肴(さかな)は?」という質問に、「チーズですね。どんなチーズが日本酒に合うか、というよりもチーズ全般的に日本酒とすごく合いますよね」と教えて頂きました。
まずは、お手軽な6pチーズから相性を確かめてみよう!
古都千年純米大吟醸
長い歴史を持つ京都の街にちなんで命名。
京都府産酒造好適米「祝(いわい)」を使用し、深みのあるまろやかで上品な味と、フルーティーな吟醸香が特徴。
「全米日本酒歓評会(大吟醸酒B部門)」で5年連続金賞を受賞した海外からも注目度の高い逸品。
720ml、税別 2,500円
齊藤酒造株式会社
京都市伏見区横大路三栖山城屋敷町105番地
TEL 075-611-2124