九州地方の地酒というと、焼酎をまず思い浮かべる方も多いかと思います。特に大分県は、二階堂などを代表とする麦焼酎が有名な地域ですが、今回は大分県のブランド甘藷(かんしょ)※1を使用した芋焼酎「熊八伝説」をご紹介します。
※1サツマイモの別名
大分のブランド高糖度かんしょ「甘太くん」とは
阿蘇山の噴火による火山灰土が広がる大分県東部の丘陵地は、さつまいもの栽培に適した環境で、主に青果用の「べにはるか」という品種が栽培されています。
近年、このべにはるかを収穫後40日間保存したものが、JAおおいたより「甘太くん」というブランド名で販売されるようになりました。さつまいもは保存することででんぷん質が糖へと変わり、一般的なさつまいもに比べ何と1.5倍も甘くなるんだそうで、この保存期間を経てはじめて「甘太くん」が完成します。
そんな手間のかかった原料を使用した焼酎を作っているのは、甘太くんの産地・臼杵市に酒蔵を構える久家本店。創業1860年の老舗で、地元産の紅芋を使った芋焼酎の他、麦焼酎や梅酒・清酒なども製造しています。
熊八伝説は麦焼酎と芋焼酎の二種類が販売されていますが、いずれも少量生産のため一般には流通しておらず、大分県内での限定販売となっています。商品名の「熊八」とは、大分県の別府市で初めて観光バスのバスガイドを考案するなど、別府の観光開発に尽力した「油屋熊八」という人物の名にちなんでいます。
常圧蒸留・荒濾過、なのに飲みやすい!熊八伝説は芋が苦手な人にオススメ
熊八伝説の製造方法の特徴といえば、何と言っても「常圧蒸留」と「荒濾過」です。
焼酎の蒸留の仕組みは、簡単に言うと【もろみを熱し、蒸発したアルコールを含んだ蒸気を冷却する】というものなのですが、現在主流の減圧蒸留は、蒸留器の中の空気をポンプで抜くことによって、通常よりも低い沸点でアルコールを取り出すことができるため、焼酎特有の臭みや雑味が少なくなり、飲みやすい焼酎が完成します。
熊八伝説の製法である常圧蒸留は、気圧の操作をせずに蒸留するので、自然な風味が引き出される反面、雑味も出やすくクセの強い焼酎に仕上がるという難点もあります。しかし熊八伝説は、昔ながらの常圧蒸留に加え濾過も必要最低限という、いかにもマニアにしか受け入れられなさそうなTHE!芋焼酎な製法にも関わらず、老舗ならではの技術力と素材の甘太くんの美味しさによって、驚くほどに飲みやすく臭みもクセもない焼酎に仕上がっています。それでいて芋の存在感はしっかり残っているので、芋が好きな方だけでなく、苦手な人にもオススメ。
アルコール度数は20度。別府市内のスーパーで900ml・1,140円で購入しました。
一緒に購入した甘太くんの焼き芋をアテに。
甘太くんは生のものや石焼にしたものが、大分県内のスーパーなどでもあちこちで販売されており、冬場はコンビニでも購入することができます。裏ごししたかのようなしっとりとした食感と強い甘さは、まるでスイートポテトのよう。口にした瞬間、思わず声が出てしまうほどの美味しさです。こんがりと焼けた皮は剥かずにそのまま食べられます。皮と身の隙間に蜜が溢れ出して…ああ、もうたまりませんなぁ。
後味さっぱりな辛口の熊八伝説と甘い甘太くんの焼き芋の組み合わせは、永遠に飲み続けられるのではないかと思うぐらい相性抜群。どちらも大分においでの際は、ぜひとも口にしていただきたい隠れた逸品です。
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