中野酒造は、県北に位置する杵築市の小さな酒蔵で、長年初代女将の名前を冠した「智恵美人」という大衆的な日本酒を造り続けていました。そんな折、四代目の現蔵元が「ワイングラスに似合う日本酒を」というコンセプトで、新ブランド「ちえびじん」を創設。そしてなんと、2016年にワインの世界的権威「ロバート・パーカー・ワイン・アドヴォケート」から、100点満点中90点以上の高得点を獲得する快挙を成し遂げたのでした。
おめでたいパッケージの新酒は特に入手困難
日本のみならず、世界からも注目を集めるちえびじんは、通年販売の「純米大吟醸山田錦 火入」の他に、年に数回期間限定品をリリースします。しかし、県内の酒屋ならどこにでも売っている「智恵美人」とは違い、ひらがな表記の方のちえびじんは、少量生産で限られた特約店にしか卸していないので、いづれも非常に入手困難な幻のお酒。特にこちらの新酒は、お正月用に最適なおめでたい紅白市松格子ラベルということもあって、年を越すと相当手に入りづらくなります。
彗星というのは、北海道で作られている酒米(酒造好適米)の品種名です。同じく北海道で作られている酒米の「吟風」と「初雫」を交配した品種で、タンパク質の含有量が少なく、溶けにくい性質を持つため、彗星使ったお酒はシャープな味に仕上がるのが特徴。例年、ちえびじんの新酒のおりがらみは、山田錦が用いられていましたが、今年はこの彗星が選ばれました。
よく目にする「おりがらみ」ってどんなお酒なの?
光り輝くゴールドのステッカーには、「おりがらみ」の文字が。
日本酒はもろみを搾った直後の状態だと、米や酵母などの小さなカスが浮遊しているので、タンクの中で少し寝かせて上澄みを出荷します。これが、私たちが一般的に目にする透明な日本酒なのですが、浮遊物=オリを取り除かずに瓶に詰めたものを「おりがらみ」と呼び、不純物を取り除いていないため、おりがらみは薄っすらと濁っています。
同じく白くにごった日本酒である「にごり酒」や「どぶろく」は、わざと目の粗い布で濾しているため、材料そのものの旨味が強い反面クセも強いのですが、おりがらみはそれらに比べると飲みやすいので、にごり酒に挑戦したいけれど香りや味が強くて…という方には、入門編としておススメ。
雪のようにオリが舞い散る!シュワシュワ感とフルーツのような甘さは絶品。
瓶を少し揺らすと…
目で確認できるほどの大粒のオリが!まるでスノードームのように、瓶の中を舞い踊ります。
蓋を開けると、炭酸飲料のように「プシュッ」とガスが抜ける音がします。おりがらみのお酒の多くは、火入れしない生酒の状態で出荷されるため、瓶詰めされた後も瓶の中で発酵が進み、蓋を開けると発酵によって出たガスがプシュッと音を立てて吹き出すのです。
その味わいは、彗星の持ち味であるすっきり感の中に、ちえびじん特有のコクもあり、メロンを思わせる甘さと酸、そして薄っすらとガスのシュワシュワも感じることができます。
ちえびじんは、どの商品も甘みや酸味、旨味やコクなどのバランスがよいのが特徴なのですが、こちらの商品は彗星の個性を活かしつつ、しっかりとちえびじんらしい味わいに仕上がっているのはさすがです。飲みやすいことこの上なしなので、日本酒が苦手な人にこそおすすめしたい商品です。日本酒好きには、飲みやすすぎてちょっと危険かもしれません。
時間をかけてチビチビ飲むのがおススメの飲み方
おりがらみは、飲み進めるに従って透明な上澄みからオリの濃い部分へと、どんどん見た目や味が変わっていきます。開けてから何日か経つと、徐々にガスが抜けマッタリとした美味しさも堪能できますので、みんなでパ〜ッと一日で開けてしまうよりは、一人で独占してチビチビ堪能する飲み方がおススメ。
ただ、こちらのお祭り騒ぎなボトルで一人飲んでいると、無性に虚しさが募ってくるので、この商品に限ってはみんなでパ〜ッとやるのがいいかもしれませんね。