2月10日は「ふきのとうの日」です。
「2(ふ)」と「10(とう)」の語呂合わせから、宮城県古川市(現在の大崎市)の「ふるさとプラザ」が申請して、1993年に制定されました。ふきのとうをはじめとした、山菜や春野菜の販売を促進するための日とされますが、ちょうど山菜が青果店に並ぶ時期でもあり、そのはじめに出回るふきのとうは、春を知らせる山菜として知られています。
さて、ふきのとうはどんな山菜かというと、分類はキク科フキ属の多年草で、ご存知の通り、全国の山野などに自生しています。「ふき」と「ふきのとう」は全く別の野菜だと思っている人もいるかと思いますが、「ふきのとう」は「ふき」の花にあたります。この花が咲くと、地下茎から伸びる葉が出てきて、ふきになります。花芽と葉柄が別々に出てくるので、同じものに見えないという珍しい植物でもあります。
山野に自生するふきのとうは、雪解けの頃になると、一斉に芽吹き、春を知らせます。古くから食用とされ、その清々しい香りと心地よいほろ苦さは、早春の味覚として、天ぷらや和え物などにして親しまれています。
もともとはネガティブな要素だった「苦味」
苦味というと、人間が感じる5つの味のうちのひとつです。苦味は古来から敬遠される味覚でした。例えば「苦い表情」や「苦い経験」といったような、ネガティブな表現に使われる言葉でもあり、好感をもって使われるものではありません。これは、お酒の世界でも同様で、欠点として扱われることが多い要素だといえます。しかしながらワインの場合は、これが肯定的に捉えられる場合もあります。
ワインの場合、苦味はさまざまな理由でワインに現れます。ぶどうの成熟度が高いと、ワインに苦味成分が増えるといわれています。他には、アルコール度数が高い場合にも苦味を感じます。フェノールという、皮や種、梗などに含まれる物質が多い場合も、苦味が現れます。言ってみれば、ワインには必ず含まれる成分でもあり、それが個性と考えられることもあるのです。
「苦味」を品種の個性として捉える
苦味が個性のひとつとして取り上げられるぶどう品種に、日本古来の品種と言われる甲州が挙げられます。甲州は日本の様々な地域で造られていますが、山梨がそのふるさと。勝沼周辺では盛んに栽培されています。甲州は生食とワイン用の両方に用いられる品種で、淡い紫色をした「グリ系」という分類のぶどうです。勝沼周辺のワイナリーでは、スパークリングワインをはじめ、甘口から辛口まで、さまざまなタイプのワインが造られています。
甲州は苦味成分を多くあわせ持ち、しっかり搾ると苦味が出てしまいます。そのため、やさしくゆっくりと果汁を搾ってワインを造ります。しかし、皮と実の間にある旨み成分も、ある程度しっかり搾らないと出ないといわれており、生産者によってはその苦味を生かしたワイン造りをしている所もあります。苦味をどのように生かすかも、造り手のテクニックにかかっているといえるのです。
シュール・リー製法で造られたこのワインは、澱の上にワインをおくことで、甲州の持つ旨みをワインに移しており、後味に残るほんのりとした苦味とえぐみがアクセントになっています。山菜の天ぷらなどと相性がよく、そのほろ苦い味わいをしっかりと受け止めてくれます。ふきのとうを天ぷらにして蕎麦に添え、ワインと合わせてみてはいかがでしょうか。早春の味覚とワインが、冬の体を目覚めさせてくれますよ。