2月22日というと「猫の日」が有名ですが、他にもいろいろな記念日が制定されています。
食べ物やお酒に絡む記念日では「おでんの日」が挙げられます。新潟県のラジオ番組がきっかけで生まれた新潟発祥の記念日で、新潟のおでんをPRする日として、越乃おでん会が2007年に制定したものです。2月22日は「ふーふーふー」という語呂合わせからきています。
おでんの始まりといわれ
おでんは、漢字で「御田」と書きます。田は田楽を意味し、豊作を祝う歌舞である「田楽」が由来になっています。室町時代から使われるようになった「女房詞」で、長方形に切った豆腐に串を打ち、練り味噌を塗って焼いたもののことを意味していたのですが、明治の頃から現代のような、汁気の多い田楽も作られるようになったと言われています。
独自の進化を地方で遂げるおでん
現代のおでんはご存知の通り、魚のすり身を使った練り物を中心に、野菜や豆腐などを出汁に入れて煮込んだ料理ですが、もともとは東京が発祥。後に関西へと広まり、関西ではおでんのことを「関東煮(かんとだき)」と呼んで親しむようになりました。
大正から昭和にかけての大阪を舞台にした小説「夫婦善哉」にも登場し、現在でも専門店や家庭で楽しむ味覚のひとつになっています。今では日本全国に広まっているおでんですが、地域によって入るおでん種が違ったり、味付けが変わったりと、地方によって独自の進化を遂げている料理でもあります。
そもそも、記念日のきっかけとなった、新潟のおでんにどんな特徴があるのか、ご存じない方のほうが多いのではないかと思います。佐渡の焼あごを使うなど、新潟の素材を生かした出汁を使い、新潟県産の食材を使ったおでん種を煮込みます。おでんのつゆにはたっぷりの新潟県産の日本酒を使い、食べるときには、新潟特産の調味料の「かんずり」や「かぐら南蛮」、「藻塩」や「麹味噌」などを添えていただくのが特徴です。
おでんにつきものの「ちろり」
おでんの専門店に行くと、おでん鍋で日本酒を熱燗にしているのを見かけます。筒型をした入れ物に取っ手と注ぎ口がついた「ちろり」という入れ物に日本酒を入れ、おでんの出汁の中で温めます。おでんは、出汁を沸騰をさせずにゆっくりとおでん種を煮込むため、熱燗をつけるのにもちょうどいい温度でもあります。ちろりは錫や銅など、熱伝導の良い素材でできており、お酒の雑味が抜け、まろやかになると言われています。
ひとくちに熱燗といっても、さまざまな温度があるのをご存知でしょうか。ほんのり温かい「日向燗」、触ると温かく感じる程度の「人肌燗」、香りが引き立つ「ぬる燗」、お猪口に注ぐと湯気が出る程度になると「上燗」、徳利から湯気が出るのが「熱燗」、さらに熱くて徳利に触ると熱いのが「とびきり燗」と、温度によって呼び名も変わります。おでん鍋の中にちろりを入れて、ゆっくり燗をつければ「熱燗」や「とびきり燗」の出来上がりです。
燗の温度によって日本酒にも向き不向きがある
さて、温度が細分化されている燗酒ですが、温度によって向き不向きがあるのをご存知でしょうか。実際、大吟醸などの繊細な香りのものは熱燗には向かないと言われています。どちらかというとコクのあるどっしりしたタイプの日本酒が向いており「生もと造り」や「山廃造り」の日本酒は熱燗にすると、さらに香りがふくらみ、味わい深くなります。上燗よりも上の温度でいただくなら、本醸造のお酒がぴったりです。
本醸造の日本酒には、醸造用アルコールが使われていますが、その独特の香りや風味が抜け、まろやかな味わいを楽しむことができます。熱々にしても香りや旨みが損なわれないので、とびきり燗を楽しむのにうってつけです。
暦の上では春ですが、まだまだ寒い夜もある2月の終わり。あったかいおでんと、とびきり燗にした本醸造でしっぽり過ごすのも、オツなものですよ。