3月9日は雑穀の日です。日本古来からの主食である雑穀の、素晴らしさを伝える日として、一般社団法人日本雑穀協会が定めた日です。3と9で雑穀の語呂合わせから来ており、新生活が始まる春に、少しでも多く雑穀を取り入れてもらえるようにとの願いも込められています。
雑穀とはそもそもどんなもの?
穀物は古くから農学的に、主穀、雑穀、菽穀、擬穀の4つに分けられ、主穀は稲、小麦、とうもろこしを指し、雑穀はイネ科の作物のうち、ヒエ、アワ、キビなどの総称です。菽穀は豆類を指し、擬穀は蕎麦、アマランサス、キヌアなどを指します。雑穀そのものは、時代の移り変わりとともに、捉えられ方も変わっており、一般的には、主食以外の穀物の総称をいいます。「十六穀」や「二十四穀」といった名前でブレンドされた雑穀は、白米に炊き込むだけでなく、パンなどにも使用され、広く知られるようになっています。
雑穀は、かつては主食穀物として栽培されていましたが、お米が増産されるようになったことで徐々に廃れていきました。家畜やペットなどの飼料用穀物としてのほうが、栽培量は多いのが現状ですが、食物繊維が多く含まれ、栄養価の高い雑穀は健康に良いことから見直され、食生活に取り入れられるようになってきました。需要は増えつつありますが、栽培量は相変わらず少ないため、お米よりも高値で取引されています。
スーパーフードとしても注目される雑穀
日本で古来から親しまれている雑穀の中には、スーパーフードとして知られるようになったものもあります。スーパーフードは、栄養バランスに優れ、一般的な食品よりも、有効成分が突出して多い食品のことをいいます。発芽玄米や赤米、もち麦などの雑穀は、体の中からきれいに、健康になろうという、新しいライフスタイルに欠かせないものとなっています。
意外と多い雑穀のお酒
健康効果で一躍人気となった雑穀ですが、お酒の材料としても使用されています。例えば、ごまを使ったごま焼酎や、赤米を使った甘酒や、ヒエのどぶろくなど、実にさまざまなものがあります。中でもよく知られているのが、蕎麦の産地で多く作られている蕎麦焼酎ではないでしょうか。蕎麦の実を原料とした蒸留酒ですが、作られるようになったのは1973年と歴史は浅く、霧島酒造が「そば焼酎雲海」を製造・発売したのが始まりです。
蕎麦焼酎を作るのには、蕎麦の実のでんぷんを糖に変える、麹の存在が重要になりますが、蕎麦の実は外皮が硬いため、蕎麦の麹を作るのは困難でした。そのため、米麹を使用して蕎麦のお酒を醸造し、それを蒸留することで蕎麦焼酎を造るのが一般的でした。しかし、宝酒造が独自技術で蕎麦麹の製造に成功し、特許を取得。蕎麦麹を使った蕎麦焼酎はまさに十割の蕎麦焼酎ということになったのです。
蕎麦は秋に収穫されて新蕎麦が出回るため、美味しいのは秋から冬と言われています。まだ肌寒い春先の雑穀の日は、蕎麦屋さんに行って、蕎麦焼酎を楽しみながら過ごすのも良いのではないでしょうか。蕎麦を頼む前に、板わさや玉子焼きなどをつまんだり、天ぷらを頂いたりしながら、蕎麦焼酎を傾け、締めに香り高い蕎麦を手繰る。蕎麦焼酎は蕎麦湯割りでいただくのもいいでしょう。こんなお酒の嗜み方は、日本でないと出来ないことではないでしょうか。和の情緒あふれる一献を楽しむのも乙なものです。