6月5日は落語の日です。
らく(6)ご(5)の語呂合わせからくる記念日ですが、実は幻の記念日なのです。
日本記念日協会等には申請されておらず、きちんと制定されていないのですが、いわくつきの記念日として落語ファンの間で知られています。
別の記念日として、6月第1月曜を「寄席の日」とし、東京都内の4つの定席と国立演芸場の入場料が割引になったり、うちわを配布する活動が行われています。
落語の日が「幻の記念日」といわれる理由
落語の日を制定したとされるのが、春風亭正朝という落語家。
ところが、ご本人がブログで「あたしゃ知りませんでしたよ」と、事の顛末をアップされています。
若き日の春風亭正朝は、寄席や落語会の発展を願い、なんとか活性化することが出来ないかと考えていました。
若い噺家仲間と雑談しているときに、落語の日を作ったら面白いのではないかという案が。
映画の日が割引をするように、落語の日には木戸銭を割引したり、イベントを行ったり。素晴らしいアイデアだと思った正朝は、落語協会を動かして実現したいと考えました。
まずは理解のある落語協会理事・圓窓師匠に相談しました。圓窓師匠は落語の日について賛成してくれます。
寄席文字職人の橘右橘さんも賛同してくれます。どんどんいろいろな人を巻き込み、大きな流れが出来てきました。
そして東京・新宿の紀伊国屋ホールで、落語の日制定イベントを行ったのです。
しかし、いろいろな反対の動きが。最終的には落語の日制定には至りませんでした。
このときの企画書を書いたのが春風亭正朝で、記念日の候補の1つに、6月5日があったのだそうです。
落語に出てくるお酒の話
記念日が幻のものだったという事実はさておき、落語は江戸時代の風俗や、庶民のくらしを写し取り、今に伝えるものとして、今でも広く親しまれています。
江戸時代の庶民のありようが生き生きと語られる中には、当然お酒が絡む噺も数多くあります。
たとえば「禁酒番屋」や「親子酒」、「蝦蟇の油売」、「猫の災難」などなど。お酒の話は落語には欠かせないものかもしれません。
お酒を飲み、酔いしれる様子を鮮やかに再現するさまは、噺家の真骨頂とも言えます。
落語を聞きながら、お酒が飲みたくなる人も、きっと多いのではないかと思います。
江戸時代にもてはやされたお酒
落語に出てくる登場人物が生きる江戸時代は、どんなお酒が飲まれていたかというと、なんといっても「下り酒」が好まれていました。
江戸では上方の樽廻船でやってくるお酒のことで、関西で造られたお酒のことを指します。
江戸時代中期頃までは伏見のものが中心だったといわれていますが、それ以降は灘のお酒が江戸では飲まれていました。
灘のお酒の消費量が多くなったことで、伏見の酒蔵は1/3に減ってしまったというエピソードがあるほどです。
日本一の酒処・灘五郷
灘五郷は兵庫県神戸市・西宮市にある灘の酒の産地を総称したもので、日本酒好きなら一度は訪れてみたい、日本酒の聖地的な場所です。
2020年6月には文化庁認定の日本遺産にもなり、文化的にも重要な場所となっています。
自然が生んだ日本酒づくりには欠かせない環境と、海上輸送の重要拠点であったことが重なり、数多くの有名日本酒ブランドが生まれています。
灘の酒造メーカーは大手メーカーが多く、工業的なイメージがあるかもしれませんが、会社が大きい分、さまざまな研究を手掛け、その結果を落とし込んだお酒を造っていたりします。
そうしたお酒を楽しめるのが、何よりの魅力だといえます。
落語の日は幻でしたが、最近は動画サイトなどでも落語を楽しむことが出来るようになりました。
落語を家で楽しみながら、灘の酒を楽しむのも乙なもの。
江戸の庶民のくらしを感じながら、楽しい夜が更けそうです。