毎月17日は、いなりの日です。
いなり寿司の材料を販売している、長野県のみすずコーポレーションが、制定した記念日です。
17を「い~な」と読む語呂合わせから制定した記念日で、いなり寿司を食べる機会を増やすことを目的としています。
江戸の昔から庶民に人気のいなり寿司
さて、いなり寿司はいつ頃から食べられるようになったのでしょうか。
いなり寿司の歴史を遡ると、江戸時代後期までさかのぼります。
江戸の三都と呼ばれた、江戸・京都・大阪の風俗について書かれた『守貞謾稿』にいなり寿司が登場したのが最初の記述だといわれています。
いなり寿司はその頃から、手頃な値段で楽しめる庶民の味で、さっと食べられる手軽な食べ物として人気があったといいます。
当時は天秤棒の前後に桶を取り付け、そこにいなり寿司を入れて、担いで行商する「振売」というかたちで売られていました。
幕末になると店舗を構えていなり寿司を売る人も現れ、人気となったといわれています。
いなり寿司の名前の由来
いなり寿司という名前の由来は、実はまだわかっていません。
いなり寿司というと、使われている油揚げと、その名前から稲荷神社と関係があるのではないかと考える人も多いのではないかと思います。
稲荷神社の主神は、宇迦之御魂神(うかのみたま)という五穀豊穣の神様で、またの名を御饌津神(みけつのかみ)といいます。
その「けつ」と、狐の古い呼び方である「けつ」が重なり、「三狐神」と転じたことから、稲荷神社の使いは狐とされ、いなりと関連付けられたという節があります。
狐は穀物を食い荒らすネズミを捕食し、その尻尾の形が稲穂に似ていることから、平安時代には信仰の対象でもあったといいます。
さまざまな条件が重なり、現在の稲荷信仰に結びついたと考えられています。
稲荷神社といなり寿司の関係については諸説ありますが、信仰を集めた稲荷神社と、手軽で美味しいことから好まれたいなり寿司は、ともに庶民がこよなく愛したものとして結びついていることに変わりがないといえます。
いなり寿司に合わせたいお酒
甘辛く煮付けた油揚げで酢飯を包んだいなり寿司は、やはり「寿司」というカテゴリーでもあるので、日本酒を合わせたいと思う人が多いかもしれません。
実際、握り寿司はお酒を一緒にいただくことが多いといえます。
しかし、巻き寿司やいなり寿司など、持ち帰って食べるタイプのお寿司は、ごはんものとしてしっかりとしたボリュームがあるせいもあり、あまりお酒と合わせる習慣がありません。
しかし、甘辛く煮た油揚げを味の中心として捉え、相性を考えると、赤ワインとの相性が良いことが挙げられます。
特に、日本のマスカット・ベーリーAを使用した赤ワインとの相性が良いといえます。
いなり寿司のジューシーな甘辛さと、マスカット・ベーリーAのキャンディのような甘い香りのワインがぴったりと寄り添い、いなり寿司とワインが止まらなくなります。
日本ワインの重要な黒ブドウ品種
マスカット・ベーリーAは、明治時代に新潟県で品種改良されて生まれた黒ブドウ品種で、生食と醸造用の兼用品種です。
きれいなガーネット色のワインは、フルーティで綿あめやキャンディのような香りが特徴。
現在、マスカット・ベーリーAは、山梨県を中心に日本全国で栽培されており、赤ワイン用品種として、日本ワインには欠かせない存在となっています。
さまざまなタイプのワインが造られていますが、ミディアムボディの可愛らしい雰囲気は、デイリーよりちょっといいワインとして週末の食卓を飾るのにふさわしく、多くのワインラヴァーに親しまれています。
庶民の食卓を飾るいなり寿司は、現在では中に入れる酢飯を工夫したり、いろいろなものが売られるようになりました。
甘辛い油揚げと酢飯の、バランスの取れた味わいに、赤ワインを合わせれば、いつもよりちょっとリッチな気分になれそうです。