7月1日は壱岐焼酎の日です。
1995年のこの日、壱岐焼酎は長崎県壱岐市の地理的表示に国税庁が指定しました。
2005年に10周年を迎えた区切りで、壱岐酒造協同組合が記念日を制定し、壱岐焼酎の美味しさを伝える日として、日本記念日協会により、認定・登録されました。
WTOの地理的表示を受けた焼酎は、壱岐の麦焼酎、熊本県人吉地方の米焼酎、沖縄県の琉球泡盛、鹿児島県の芋焼酎の4種類のみです。
世界が認める壱岐焼酎
麦焼酎というと、宮崎県や大分県で作られる甲類焼酎のイメージが強く、あまりよく知らない人のほうが多いのではないでしょうか。
壱岐焼酎の歴史は古く、16世紀までさかのぼります。壱岐は土地が肥沃であったことから、米作りが盛んに行われていました。
当時の平戸藩はそれに目をつけ、芋などではなく、高価な米や麦で年貢を納めることを奨励しました。
年貢として米を納めてしまうと、手元に込めはほとんど残りません。
そこで、壱岐の人たちは、麦を主食とする傍らで、麦を使ったどぶろくを作り、ささやかな楽しみとしていました。
しかし、どぶろくは日持ちがしないお酒です。
それならばと、当時中国から伝わってきた蒸留技術を使い、米麹を合わせて、麦焼酎を造るようになります。
焼酎造りは壱岐で急速に広がりました。
今の焼酎造りは、新しい技術を取り入れてまでお酒を造り続けた、庶民の熱意が生んだものだとも言えるかもしれません。
壱岐焼酎の蔵元
400年前から脈々と続く壱岐の焼酎造りは、かなり盛んに行われていました。
明治33年の記録では、清酒が17場に対し、麦焼酎は38場と倍以上で、清酒業者も麦焼酎を兼業で造っていたことが記されています。
1899年に酒税法が施行されると、壱岐の蔵元は55軒となりました。
その後、統廃合を繰り返し、現在壱岐焼酎の蔵元として、麦焼酎を造っているのは7つの蔵元。
その中には6つの会社が協業して作った「壱岐焼酎協同組合」が元となっている会社もあり、それぞれに個性の光る麦焼酎を作っています。
壱岐焼酎協同組合が元となったのは、壱岐の蔵酒造という会社。
個性的な常圧蒸留の焼酎に加え、減圧蒸留の焼酎にも取り組み、フルーティな口当たりの焼酎も造っています。
また、日本で初めて花酵母で造った焼酎を造り、話題にもなりました。
壱岐焼酎を形作る「水」と「比率」
壱岐の島の土台層は玄武岩層で出来ており、壱岐焼酎には、その地層で磨かれた、ミネラルたっぷりの美味しい水が使用されます。
焼酎蔵のある地域によって、仕込みに使う水は性質も違い、また、焼酎の製法もそれぞれ違うことから、7つの蔵元が造る焼酎はそれぞれとても個性的です。
また、壱岐焼酎の特徴とも言えるのが、米麹を使用していること。
米麹と大麦の比率を1対2とすることで、米の旨みと麦の風味のバランスが取れるといいます。
水の違いや、蒸留方法の違い、そして熟成方法の違いが、ひとつひとつの麦焼酎を形作り、それぞれの美味しさを生むといえます。
シェリー樽熟成で生まれる、新たな美味しさ
壱岐の蔵酒造では、出来上がった麦焼酎をシェリー樽を使って熟成させたものを販売しています。
シェリー樽は、スペインのシェリー酒を造る時に使用されていたもの。
シェリー樽を使うと、フルーティな香りや味わいが焼酎に移るといわれ、ウイスキーを造る際にも盛んに用いられていることで知られています。
壱岐の蔵酒造では、原酒をシェリー樽で寝かせ、42度のものを25度まで加水してボトリングしています。
焼酎は酒税法上、ウイスキーの10分の1程度の色の濃さを超えてはいけない決まりがあるため、ウイスキーのように琥珀色になるまで熟成させることは出来ませんが、樽由来のフレーバーの感じられる壱岐焼酎は、極上の味わいです。
壱岐焼酎を記念する日には、美味しい壱岐焼酎を飲んで過ごしたいですね。
もしも叶うなら、壱岐の郷土料理をつまみに。壱岐の海の幸を使った、うに飯やいか料理を楽しめたら最高です。
それぞれの楽しい夜を生んでくれる壱岐焼酎に感謝したいものです。