5月16日は旅の日です。
旅好きの作家などで結成された「日本旅のペンクラブ」が1988年に制定した記念日で、1689年に松尾芭蕉が奥の細道に旅立った日がいわれとなっています。
普段忘れがちな旅の心を大切にし、旅人とはなにかについて考える日として制定し、旅にちなんだ川柳の募集やコンテストを行っています。
奥の細道の旅程はどんなもの?
奥の細道と聞いて、どんな地域を松尾芭蕉が旅したか、詳しく知っているでしょうか。
江戸を出た松尾芭蕉が門人の曽良と向かったのは下野の日光。
そこから現在の福島県を北上し、東北地方の松島や平泉の中尊寺へ向かいます。
さらにそこから日本海側へと向かい、酒田や村上、出雲崎などを経由し北陸地方へ。
金沢や山中温泉に立ち寄り、永平寺、敦賀を抜けて岐阜県の大垣でその旅を終えています。
距離にすると約2400キロ、およそ5ヶ月の長い旅は、もちろん徒歩での移動だったので、いかに大変な旅だったかがわかります。
旅先では行く先々でその土地の人やさまざまなものと出会い、数多くの句を残すことになりました。
なかなか現代では真似することの出来ない、冒険にも近い旅だったことが感じられます。
じっくりと時間をかけて旅情を味わう
現代の旅というと、飛行機や新幹線などの速くて便利な交通機関があるので、手軽にそうしたものを利用し、遠くまで行くことが出来るようになりました。
しかし、急ぎ足で移動する現代の旅に疑問を持つ人も多く、わざわざ各駅停車や急行、船や高速バスといった交通機関を利用して旅情を楽しむ人も増えています。
JRの青春18きっぷがそのいい例で、各駅停車と急行のみを自由に乗り降りしながら過ごす旅では、思いがけない出会いを体験することが出来ます。
すべてを徒歩で回ることは叶わなくても、各駅停車の電車に乗ってゆっくりと移動することで、見える景色も違ってくるといえ、途中立ち寄った先などで出会う人やものから影響を受けることも多いかも知れません。
旅の楽しみってどんなもの?
旅に求める楽しみは、人それぞれかも知れませんが、やはり行った先の土地でとれる食材を使った料理やお酒を楽しむのは、旅をする上でこの上ない楽しみになるのではないでしょうか。
その土地でしか取れない野菜や魚介、見たことのない郷土料理など、旅をめぐる食の楽しみは非常に幅が広く、知見を広げることの出来るものだといえます。
例えば松尾芭蕉も奥の細道を歩いて旅する中で、山形県の鶴岡では民田なすを食べたとか、新潟県の村上では井筒屋という宿に2泊し、伝統的な鮭料理を堪能したといわれています。
旅先でおいしいものを食べることが、旅の大きな楽しみになるのは、昔も今も変わらないのかも知れませんね。
旅した先で飲むお酒
やはり旅した先で楽しみたいのは、その土地でしか飲むことの出来ないお酒を選びたくなります。
例えば松尾芭蕉が鮭料理を食べた村上であれば、〆張鶴で有名な宮尾酒造があります。
「淡麗旨口」といわれる、すっきりとしていながらお米のうまみやふくよかさがしっかりと感じられるお酒を造っている酒蔵です。
鮭が遡上してくる三面川の伏流水を使用したお酒は、ていねいに造られたとびきりのものから、普段の食卓にもしっくりくる手頃なものまで幅広く揃っています。
蔵で直接購入するお酒は状態が良くてとりわけおいしく、問屋や酒屋を経由してくる東京の飲食店などで飲むそれとはだいぶ違う印象を感じたりするものです。
日本酒は思いの外デリケートに出来ているので、ワインよりも取り扱いが難しい印象がありますが、蔵出しの搾りたてのお酒などは、その傾向が強いように感じられるので、ぜひ旅に出たらその土地で酒蔵を探して、そこに直接買いに行って欲しいなと思います。
旅に出たらぜひ、その土地の食べ物とお酒を。
きっとそんな食体験が心に残るものとなるはずです。